相続税の修正申告|期限と延滞税、申告書・納付書の書き方、報酬
申告した相続税額が誤っていた場合や、遺産分割の結果、税額に変更が生じた場合は、修正申告をすべきです。
この記事では、修正申告をすべきケースや、修正申告時の注意点、税理士報酬、申告方法等についてご説明します。
修正申告をするケース
修正申告をするケースは、当初申告時に申告した税額より増える場合です(税額が減る場合は「更正の請求」をします)。
具体的には、次のようなケースがありえます。
- 税額や評価額の計算や計算方法を間違っていた、当初申告後に他にも遺産があることがわかった、当初申告時には無価値だと思っていたものが高価なものであることがわかった
- 当初申告後に遺産分割した、遺産分割をやり直した、遺留分侵害額が確定した、相続人に変動が生じた、遺言書が発見された
これらのケースに該当しても税額に変更がなければ、修正申告は不要です。
なお、2のケースでは、相続税の総額に変更がなく、各相続人の内訳に変更が生じるというケースがありえますが、修正申告は基本的には不要です。税額が増えた人が減った人にその分を支払えば問題ありません。
なお税額が減った人は、税額が増えた人が差分を支払ってくれない場合等は、税務署に更正の請求をすることで還付を受けることができます。この場合は、税額が増えた相続人は修正申告が必要です。
時効・期限
修正申告ができるのは、法定申告期限(相続開始を知った日の翌日から10か月以内)の翌日から原則として5年以内です。
一度申告を済ませていたとしても、法定申告期限内であれば、修正申告ではなく訂正申告という手続になり、後述のような修正申告のペナルティはありません。
法定申告期限の翌日から5年経過後は、原則として修正申告はできません(時効となるので不要です)。
ただし、当初申告時に意図的に税額を少なく申告していた場合は時効完成までの期間が2年長くなり、7年間となります。
注意点・ペナルティ
修正申告は当初申告に比べて、次のように不利な取り扱いがなされることがあります。
- 「申告期限後3年以内の分割見込書」が未提出の場合、小規模宅地等の特例や配偶者控除が受けられないことがある
- 隠蔽・仮装した財産は配偶者控除が受けられない
- 延滞税や過少申告加算税・重加算税がかかる場合がある
「申告期限後3年以内の分割見込書」が未提出の場合、小規模宅地等の特例や配偶者控除が受けられないことがある
当初申告の期限までに遺産分割協議が調わない場合は、法定相続分に基づき相続したものと仮定して相続税を申告することになります。
その際、「小規模宅地等の特例」や「配偶者控除」(「配偶者の税額軽減」)は適用できませんが、「申告期限後3年以内の分割見込書」を添付しておくことで修正申告時に適用することができます。
もっとも、この場合は税額が減ることが多く、税額が減る場合は、前述のとおり、修正申告ではなく「更正の請求」をすることになります。
隠蔽・仮装した財産は配偶者控除が受けられない
当初申告時に隠蔽・仮装した財産がある場合、その財産については配偶者の税額軽減を適用することはできません。隠蔽・仮装したのが配偶者でなく、他の相続人だったとしても同じです。
隠蔽は故意に事実を隠すこと、仮装は故意に事実を変えることです。
延滞税や過少申告加算税・重加算税がかかる場合がある
修正申告では、当初申告で納付した税額との差分を納付しなければなりませんが、さらに、延滞税や過少申告加算税・重加算税がかかることがあります。
これらの税金が課せられる場合は、修正申告後、税務署からその旨の通知書が届きます。
通知書に税額が記載された納付書が同封されているため、これらの税がかかるかどうかを自分で判断したり、税額を自分で計算する必要はありませんが、気になるでしょうから、以下、それぞれが課せられる場合や税率等について説明します。
延滞税
延滞税とは、税金が定められた期限までに納付されない場合に、原則として法定納期限の翌日から納付する日までの日数に応じて課される、利息に相当する税金のことです。
かかる場合
延滞税がかかるのは、前述の「修正申告すべきケース」の1に該当するケースです(2に該当するケースでは延滞税は免除されます)。
つまり、次のような場合には延滞税がかかります。
- 税額や評価額の計算や計算方法を間違っていた
- 当初申告後に他にも遺産があることがわかった
- 当初申告時には無価値だと思っていたものが高価なものであることがわかった
次のような場合には、原則として、修正申告しても延滞税はかかりません(修正申告をした日までに税額を納付しなかった場合は翌日から延滞税がかかります)。
- 当初申告後に遺産分割した
- 遺産分割をやり直した
- 遺留分侵害額が確定した
- 相続人に変動が生じた
- 遺言書が発見された
計算方法、割合、計算例
延滞税は、①「納期限(※)までの期間及び納期限の翌日から2か月を経過する日までの期間」と②「納期限の翌日から2か月を経過した日以後」とで割合が異なるため、下の図のように、①と②をそれぞれ計算して合算します。
※修正申告の納期限は、「修正申告書を提出した日」です。
(画像出典:国税庁ウェブサイト)
(注2)記事執筆日現在、延滞税の割合は、①の期間は年2.4%です(令和4年1月1日から令和6年12月31日までの期間)。
なお、②については年「14.6%」と「延滞税特例基準割合+7.3%」のいずれか低い割合を適用することとなります。延滞税特例基準割合は日付によって異なります。
- 令和3年1月1日~令和3年12月31日…8.8%
- 令和4年1月1日~令和4年12月31日…8.7%
- 令和5年1月1日~令和5年12月31日…8.7%
- 令和6年1月1日~令和6年12月31日…8.7%
令和3年以降は、割合が変更になる可能性があります。
なお、令和7年以降の割合は、その時期になったら、国税庁ウェブサイトに掲載されます。
また、期限内申告書の提出後1年以上経過して修正申告があった場合(重加算税が課された場合を除く。)には、法定納期限から1年を経過する日の翌日から修正申告書を提出した日までは延滞税の計算期間から控除されます。つまり、重加算税が課された場合を除き、延滞税は最大1年分しか課せられないということです。
過少申告加算税・重加算税
過少申告加算税は、申告はしたが申告した税額が過少であった場合に課せられる税金です。過少申告加算税がかかるのは、税務調査の通知があってから修正申告をした場合です。
税務調査の通知があったわけではなく自主的に修正申告をした場合は、過少申告加算税はかかりません(前述の延滞税はかかります)。
重加算税は、事実を仮装隠蔽し申告を行わなかった場合や、仮装に基づいて過少申告を行った場合に課せられる税金です。
重加算税の方が過少申告加算税よりも税率が高く設定されており、重加算税が課せられる場合は、過少申告加算税は課されません。
割合
過少申告加算税の割合は、税務調査の前後で異なります。
期限内申告書を提出した後、修正申告書の提出または更正(修正申告に応じず税務署側が誤りを正すこと)があったときには、修正申告または更正により納付することとなった税額の10%(期限内申告税額と50万円のいずれか多い額を超える部分は15%)に相当する過少申告加算税が課せられます。
ただし、平成29年1月1日以後に法定申告期が到来するもの(平成28年分以後)については、調査の事前通知の後にした場合は、50万円までは5パーセント、50万円を超える部分は10パーセントの割合を乗じた金額の過少申告加算税がかかります。
令和6年1月1日以後に法定申告期限が来るもの(令和5年分以降)については、税務調査等で帳簿の提示または提出を求められた際、帳簿の提示等をしなかった場合および帳簿への売上金額の記載が本来記載等すべき金額の1/2未満だった場合は、納付すべき税額に対して10%の割合を乗じて計算した金額が加算されます。
また帳簿への売上金額の記載等が本来記載等すべき金額の2/3未満だった場合は、納付すべき税額に対して5%の割合を乗じて計算した金額が、加算されます。
税理士報酬
修正申告の税理士報酬については、1年度あたり10~30万円程度とされています。事務所によって異なるので、それぞれの税理士事務所に相談してみましょう。
相続に強い税理士をお探しの方は、e税理士までお気軽にお問い合わせください。
申告書と納付書の入手方法と書き方
税理士に依頼せず自分で申告する場合は、申告書と納付書も自分で作成することになります。
申告書
申告書は、国税庁ウェブサイトの「B1-2 相続税の申告手続」のページからダウンロードできるほか、全国の税務署で受け取ることも可能です。
申告書の様式は年ごとに更新されるため、相続開始の日が属する年の申告書を利用しましょう。毎年7月上旬頃に、その年の様式の配布が開始されます。
また、用紙を税務署で入手する場合は、全国どこの税務署で入手しても構いません。
申告書は、下の表のとおり、たくさんの種類があります。
各種表番号 | 表及び付表名 |
---|---|
第1表 | 相続税の修正申告書 |
第1表(続) | 相続税の修正申告書(続) |
第3表・第8表2(修正申告用) | 財産を取得した人のうちに農業相続人がいる場合の各人の算出税額及び農地等納税猶予税額の計算書 |
第3表(続)・第8表2(続)(修正申告用) | 財産を取得した人のうちに農業相続人がいる場合の各人の算出税額及び農地等納税猶予税額の計算書(続) |
第5表の付表 | 配偶者の税額軽減額の計算書(付表) |
第8の2表(修正申告用) | 株式等納税猶予税額の計算書(一般措置用) |
第8の2の2表(修正申告用) | 特例株式等納税猶予税額の計算書(特別措置用) |
第8の3表(修正申告用) | 山林納税猶予税額の計算書 |
第8の4表(修正申告用) | 医療法人持分納税猶予税額・税額控除額の計算書 |
第8の5表(修正申告用) | 美術品納税猶予税額の計算書 |
第8の6表(修正申告用) | 事業用資産納税猶予税額の計算書 |
第8の7表(修正申告用) | 納税猶予税額等の調整計算書 |
第8の8表(修正申告用) | 納税猶予税額の内訳書 |
第11・11の2表の付表1(修正申告用) | 小規模宅地等についての課税価格の計算明細 |
第15表(修正申告用) | 相続財産の種類別価額表 |
このうち必ず提出しなければならないものは、第1表の「相続税の修正申告書」と第15表(修正申告用)の「相続財産の種類別価額表」のみで、その他の申告書は該当する場合のみ提出します。
なお、配偶者の税額軽減を適用する場合は、当初申告用の第5表「配偶者の税額軽減額の計算書」が必要です。当初申告時に提出した場合も、数字が変更になるので、再計算して提出しなければなりません。
なお、修正申告用の第5表の付表「配偶者の税額軽減額の計算書(付表)」は、配偶者の税額軽減を受ける場合で、かつ、財産の隠蔽・仮装があった場合に、提出する書類なので、間違えないようにご注意ください。
その他の申告書の提出が必要な場合で、書き方が分からない場合は、税務署または税理士(依頼を検討している場合)に相談するとよいでしょう。
納付書
納付書については、当初申告の場合と異なる点は特段ないので、「相続税納付書の書き方・記載例・入手方法等についてわかりやすく説明」をご参照ください。
なお、修正申告の翌日以降に納付した場合は延滞税が課せられるため、ご注意ください。
まとめ
以上、相続税の修正申告について説明しました。
当初申告を税理士に依頼した場合は、修正申告についても同じ税理士に依頼すると良いでしょう。別の税理士に依頼するよりも面倒がありませんし、報酬も安く済むことが多いです。
当初申告を自分でやった場合も、さらなる修正が必要になることがないように、修正申告は税理士に依頼することをおすすめします。
税務調査の対象となった場合は、税務調査対応と併せて修正申告を依頼するとよいでしょう。相続に強い税理士を探すと良いでしょう。相続税にお困りの場合は、e税理士までお気軽にお問い合わせください。
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この記事を書いた人
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