現預金のみの遺産が一番損⁉相続財産ケース別チェックポイント
親子の間柄でも、家の懐事情は聞きにくいもの。
特に、相続に備えたいとはなかなか言い出しづらいですよね。
そうこうしているうちに、親の突然の入院などで、ある日突然財産を知る機会がやって来るかもしれません。しかも、相続手続きがすぐに必要になりそうな状況だったら……。
この記事では、よくある相続財産のケース別の問題点を紹介します。相続財産がどのようなものがあるか見当が付いた時に慌てないために、また、こんなケースがあるらしいよと、相続対策について話し合うきっかけに利用してください。
【衝撃度90%】思ったより現金があったケース
複数の銀行口座を持っている方、多めの現金を常に手元に準備している方も多いものです。その理由は本当にそれぞれ。
- ペイオフに備えてあえて複数の銀行口座を作って管理している
- 費用ごとに利用する金融機関を分けている
- 金融機関は信用できないからと、いわゆるタンス預金として家に全財産を置いている
- 銀行に行く手間を避けたり、万が一のためにと、いつも家にまとまった現金を置いている
- 配偶者に内緒でへそくりをしている
これらを合算したら、相当な金額に上ることもあるのです。
実は、相続税の計算で、相続税額が一番多くなってしまう可能性が高いのが、この相続財産が現預金だけのケースです。
どうして相続税が高くなるの?
具体的に例えてみましょう。
現預金の合算金額が6,000万円で、相続人が2名だったとします。
ざっくり計算すると、相続税額は180万円です。「割りと安いかも?」と思ったでしょうか。
では、もう一つ口座が見つかって1,000万円増えたとします。
すると、現預金の金額は約1.17倍になっただけなのに、相続税額は約1.8倍にはね上がって320万円になってしまいます。
相続財産の金額の増え方と相続税の増え方は比例していないのです。
どうしてこのような結果になるのでしょうか。
それは、日本の相続税は累進課税の仕組みになっており、相続額が多いほど相続税の税率もどんどん上がるからなのです。
減税制度を活用して節税。損しない相続を!
それでも、数千万のうち、ほんの数%の納税で済むのなら……と思うかもしれません。
しかし、減税制度を活用することによって、半分に減らすことができるとしたらどうでしょうか?。
さまざまな制度を活用することで相続税額を押さえられる可能性があるのです。
財産によっては数十万、数百万円以上を節税できるかもしれません。知ると知らないでは大違いです。そのためには、相続の基本、相続人の人数の考え方や、遺産分割の割合の決まりなどを理解することがとても重要です。
▼相続税を抑えるのにはどんな方法があるのか知りたい方へおすすめの記事
相続税申告を甘くみてはいけない
相続が発生し、現預金だけなら自分で手続きできそう!……意外とここにも落とし穴があります。
悪気がない計算ミスでもペナルティが⁉
相続税の計算ミスで過小な納税をしてしまい、期限後に税務署から指摘を受けるまで気づかなかったとしたら、延滞税や過少申告加算税などのペナルティがあるのです。ケアレスミスで悪気がなかったと訴えても、決して見逃してはくれません。
このような残念な結果にならないためにも、申告手続きは税理士などの専門家に依頼することを強くおすすめします。
▼相続税の計算ミスしたらどうなるのか知りたい方へおすすめの記事
わりと知られていない?おすすめの相続サポーターは行政書士!
先述のとおり、相続税の計算や仕組みは税理士に相談するのが王道です。
しかし、手続き面で見てみるとどうでしょうか。
たくさんの銀行の口座を譲り受ける手続きは思ったより大変です。
必要書類もたくさん準備しなくてはなりません。それぞれの銀行独自で相続サービスをおこなっていることも多いのですが、行政書士に依頼すると比較的安価で代行してもらうことが可能です。
さらに、行政書士は街の法律家と呼ばれており、遺産分割協議書の作成や、相続にまつわる法律にも精通しています。必要とあれば、税の専門家の税理士、登記の専門家の司法書士へのパイプ役も担ってくれます。相続のサポーターとしては行政書士がおすすめです。
【厄介度95%】不動産しかないケース
現預金はほとんどなく、相続財産が実家だけ、というケースは案外多いのです。
気持ちのすれ違いで遺産分割が難航
相続人が配偶者と子供だったらどうなるでしょう。配偶者はそのまま住み慣れた家に住み続けたい、でも、子供たちもお金が入り用で困っていた場合、真っ先に考えるのが、その家を売って現金化し、配偶者と子どもで分けたいということではないでしょうか。
しかし、配偶者は、子どもに良いようにしてあげたいけれど、本心は住み慣れた家を離れて違う家に住むことに抵抗があったり、思い出いっぱいの家を手放す寂しさがあるかもしれません。
仲の悪い親子だったら、とにかく現金化することを推し進めようとするかもしれません。
そうなると、遺産分割協議が難航するおそれがあります。しかし、話し合いに長い時間をかけることはできません。相続での難関、相続税の支払いには期限があります。相続が発生してからはあまり猶予がないのです。
▼不動産の相続方法について詳しく知って備えたい方へおすすめの記事
不便な土地を相続
では、相続した土地が利用価値の低い環境にあるものだったらどうでしょうか。
土地神話の根強い日本では、土地を手に入れられるということだけで、一瞬は嬉しいかもしれません。しかし、その土地が山林やがけ地で、災害に備えて工事が必要で何百万もかかると言われたら……?。知らぬ間に不法投棄されてトラブルが起こったら……?。
▼変わる土地の相続手続き。司法書士インタビューでリアルな実情を知りたい方へおすすめの記事
不動産については、専門的な知識がかなり必要とされます。専門家に相談しておけば、トラブルも未然に防ぐことができるかもしれません。トラブルになってしまったら、弁護士に解決を依頼することになるでしょう。紛争の解決をサポートする資格は弁護士にしかないのです。
【不安度80%】年金だけで生活しているケース
令和3年1月に厚生労働省より発表された令和3年度の新規裁定者(67 歳以下の方)の年金額の例によると、厚生年金(夫婦2人分の老齢基礎年金を含む標準的な年金額)は月額22万円です。国民年金の受給世帯であれば、この金額より低くなるでしょう。
自分の親がどのくらいの年金をもらっているか、これもなかなか面と向かって聞きづらいですよね。
日々生活するのに、充分な年金受給額でなかったら、貯金を取り崩して生計を立てているかもしれません。老後2,000万円問題も記憶に新しいと思います。
持ち家があっても油断は禁物!
「うちには家があるから大丈夫、いざとなったら売ればいいから」そう考えている方もいるでしょう。
しかし、持ち家があれば家を担保にしてお金を借りていることも考えられます。そもそも、家のローンが残っているかもしれません。
その場合、家の不動産の登記簿謄本を見ると金融機関の抵当権がついていますから、不安な方は確認してみましょう。不動産の登記簿謄本は誰でも取得することができます。
万が一、借金が多額で、プラスの財産(預貯金など)よりマイナスの財産(借金など)が多ければ相続放棄という選択を考える必要もあるかもしれません。
しかし、検討できる時間は意外に少なく、相続放棄は相続が発生したことを知った日から3ヵ月以内に申し立てる必要があるのです。このような仕組みやリスクについても事前に知っておけば対策を練ることができます。
まとめ
相続は民法、税法などの法律が関わる難解な手続きやルールが多いのに人生で関わるのはほんの数回。しかも、人それぞれの事情があるため「これが正解」と言い切れるものがありません。加えて、近年ではさまざまな特例ができたり法改正もおこなわれているので、相続の経験があっても、以前とは違う方法になっていることもあります。
「いい相続」の相続なびでは、相続で必要になる知識をカテゴリー別に詳しく紹介しています。具体的な相談事例やQ&Aも充実。是非参考にしてください。読むのが億劫という方は、相続対策に詳しい士業とのお電話での相談や、無料面談もお受けしていますので、お気軽にご連絡ください。
ご希望の地域の専門家を探す
ご相談される方のお住いの地域、遠く離れたご実家の近くなど、ご希望に応じてお選びください。
この記事を書いた人
相続専門のポータルサイト「いい相続」は、相続でお悩みの方に、全国の税理士・行政書士・司法書士・弁護士など相続に強い、経験豊富な専門家をお引き合わせするサービスです。
「遺産相続ガイド」では、遺産分割や相続手続に関する役立つ情報を「いい相続」編集スタッフがお届けしています。また「いい相続」では、相続に関連する有資格者の皆様に、監修のご協力をいただいています。
▶ いい相続とは
▶ 監修者紹介 | いい相続
相続税に関する他の記事
- 農地の相続税には、納税猶予特例の 活用がおすすめ!
- 相続税の修正申告が必要なケースとペナルティー、加算税と延滞税
- 多すぎる弔慰金は相続税の課税対象となることも!?知っておきたい弔慰金と死亡退職金のこと
- 相続税の計算で相続財産から控除できる葬式費用とは?
- 2月23日は税理士記念日|記念日の由来と相続相談するときの注意点
- 相続税還付|納め過ぎた税金が戻ってくる?還付請求のポイントと手続きの流れ
- 相続税は電子申告が可能に!e-Taxで提出する際の注意点とは?
- 相続税の障害者控除|障害者の税額控除に必要な要件と控除額
- 相続税対策を税理士に依頼するケースと依頼内容|税理士の選び方や相場は?
- 相続税の非課税枠|相続税の基礎控除額と非課税財産