相続税申告の税理士報酬の相場・旧報酬規程と料金表の見方
相続税申告を税理士に依頼するに当たって、報酬額が気になることでしょう。
この記事では、報酬の相場や料金表の見方についてご説明します。
税理士選びの参考になれば幸いです。
旧税理士報酬規程
2002年3月までは税理士報酬の上限額を定めた税理士報酬規程がありましたが、現在は廃止され各税理士事務所が自由に報酬を設定しています。
しかし、現在でも旧報酬規程に則って報酬を定めている税理士の多く、相場感を掴むための目安となりうるため、紹介します。
旧報酬規程による相続税申告の税理士報酬の上限額は、次の6つの項目の合計額になります。
- 税務代理の基本報酬
- 税務代理の加算報酬1(遺産総額に応じた加算)
- 税務代理の加算報酬2(相続人の数に応じた加算)
- 税務代理の加算報酬3(財産の評価等の事務が著しく複雑な場合における加算)
- 税務代理の加算報酬4(物納又は延納の申請に係る加算)
- 税務書類の作成報酬
以下、それぞれについて説明します。
税務代理の基本報酬
基本報酬は、一律10万円です。
税務代理の加算報酬1(遺産総額に応じた加算)
加算報酬1は、遺産総額に応じて下の表のとおりです。
遺産総額 | 報酬 |
---|---|
5000万円未満 | 200,000円 |
5000万円以上7000万円未満 | 350,000円 |
7000万円以上1億円未満 | 600,000円 |
1億円以上3億円未満 | 850,000円 |
3億円以上5億円未満 | 1,100,000円 |
5億円以上7億円未満 | 1,350,000円 |
7億円以上10億円未満 | 1,700,000円 |
10億円以上 | 1,800,000円〜 ※遺産総額が1億円増すごとに10万円を加算 |
税務代理の加算報酬2(相続人の数に応じた加算)
相続人(納税義務のある受遺者を含む)が1人増すごとに、加算報酬1の10%を加算します(なお、相続を放棄した人は共同相続人の数に算入しません)。
つまり、相続放棄した人を除いた相続人の数が2人の場合は加算報酬1の10%、3人の場合は20%、4人の場合は30%をそれぞれ加算します。
税務代理の加算報酬3(財産の評価等の事務が著しく複雑な場合における加算)
財産評価等の事務が著しく複雑な場合は、「加算報酬1+加算報酬2」の最大100%を加算します。
「著しく複雑」とは、事案の内容が極めて繁雑又は広範にわたり、かつ、資料の収集、法令の適用その他の業務処理のために特別の調査、研究若しくは役務の提供を要するものをいいます。
税務代理の加算報酬4(物納又は延納の申請に係る加算)
物納
物納とは、相続税を金銭で納付することができない場合に、金銭以外の相続財産によって相続税を納付することです。
物納を申請する場合は、物納申請税額に応じて、下の表のとおり税理士報酬が加算されます。
物納申請税額 | 報酬額 |
---|---|
1億円未満 | 500,000円 |
5億円未満 | 700,000円 |
5億円以上 | 900,000円〜 ※5億円増すごとに20万円を加算 |
また、物納に関する業務が著しく複雑なときは、さらに、上の表による報酬額の30%相当額を限度として加算することができます。
延納
延納とは、相続税を期限内に納付することが困難な場合に、分割納付する方法です。
延納を申請する場合は、延納申請税額に応じて、下の表のとおり税理士報酬が加算されます。
物納申請税額 | 報酬額 |
---|---|
1億円未満 | 100,000円 |
5億円未満 | 150,000円 |
5億円以上 | 200,000円〜 ※5億円増すごとに5万円を加算 |
税務書類の作成報酬
税務署類の作成費用として、上記の税務代理に関わる報酬額(基本報酬+加算報酬1+加算報酬2+加算報酬3+加算報酬4)の50%相当額を加算します。
設例を基づくシミュレーション
以下の設例に基づいて、報酬額を計算してみます。
- 遺産総額:5000万円
- 相続人の数:4人
- 著しく複雑な事情:あり
- 物納又は延納の申請:なし
このケースでは、項目ごとの報酬額は以下のようになります。
- 基本報酬:10万円
- 遺産総額に応じた加算:35万円
- 相続人の数に応じた加算:10万5千円=35万円×30%
- 著しく複雑な場合における加算(上限額):45万5千円=(35万円+10万5千円)×100%
- 物納又は延納の申請に係る加算:なし
- 税務署類の作成報酬:50万5千円=(10万円+35万円+10万5千円+45万5千円)×50%
報酬の上限額は以下のようになります。
10万円+35万円+10万5千円+45万5千円+50万5千円=151万5千円
税理士報酬を比べる際の注意点
料金表をウェブサイト等に掲載している税理士事務所も多いので、インターネットで税理士報酬を比較することができます。
しかし、料金表に含まれていない細かな追加報酬が多数設定されている事務所もあるので、報酬を比較する際は、同条件で比べる必要があります。
別途報酬をあまり設定せずに込々の料金表を載せている事務所と、料金表はあくまで基本料金という事務所を単純比較してしまうと、不公平な比較になっていまい、結果として、別途報酬がかさんで依頼者が損してしまうことがあります。
実際の税理士事務所の料金表
旧報酬規程について説明しましたが、前述のとおり、現在はこの規程に則っている必要はありません。
それでは、実際の税理士事務所の報酬はどのようになっているのでしょうか?
ある税理士・行政書士事務所の報酬を例に見ると、以下計算式を基本に個別に見積もるかたちになります。
基本報酬(注1)+相続人加算(注2)+個別加算(注3)+オプション加算(注4)+消費税
(注1)遺産の総額×0.5%(最低報酬30万円。千円未満切捨て)。遺産の総額は小規模宅地等の特例適用前の金額で計算。
(注2)相続人が2人以上の場合、一人当たり6万円を加算。
(注3)土地の数が1ヵ所毎に6万円、非上場株式の評価は1社毎に15万円を加算。また、遺産分割協議書の作成は10万円を加算。
(注4)戸籍謄本の取得、不動産登記簿謄本の取得費用。預貯金等の解約手数料。個別に見積もり。
具体的な料金については、税理士に確認しましょう。税理士をお探しの方はお気軽にお知らせください。
現在の相続の税理士費用の相場
前述のとおり、2002年3月までは税理士報酬の上限額を定めた税理士報酬規程がありましたが、現在は廃止され各税理士事務所が自由に報酬を設定しています。
税理士費用の相場としては、遺産額の0.5~1%ぐらいです。
高額の土地がある場合は特に報酬の安さだけで税理士を選ぶべきではない
土地には小規模宅地等の特例など様々な評価減の制度があり、それらを駆使することによって、土地の評価額は大きく変わります。
土地の評価額は税理士が計算しても同じにならないことが多く、土地評価の経験豊富な税理士ほど評価額を下げることができるでしょう。評価額が下がれば相続税の税額も下がります。
報酬額の差額分以上に相続税額を下げることができれば、仮に報酬が高くても、その税理士に依頼する価値があると言えるでしょう。
もっとも、報酬が高い税理士に依頼すると、その分、税額を低くできるかというと、そうとも限りません。
反対に、遺産の多くが現金、預貯金、投資信託、上場株式などの金額がはっきりしているものの場合は、誰が評価しても差が生じにくいため、報酬金額を主な判断材料として税理士を選んでもよいでしょう(信頼に値する人物であることは大前提ですが)。
まとめ
以上、相続税申告の税理士報酬について説明しました。
高額の土地がある場合等は、報酬の金額だけで税理士を選ぶべきではなく、一方、遺産の多くが金額のはっきりしているものの場合は、報酬金額を主な判断材料として税理士を選んでもよいでしょう。
相続に強い税理士をお探しの方はお気軽にお問い合わせください。
ご希望の地域の専門家を探す
ご相談される方のお住いの地域、遠く離れたご実家の近くなど、ご希望に応じてお選びください。
この記事を書いた人
相続専門のポータルサイト「いい相続」は、相続でお悩みの方に、全国の税理士・行政書士・司法書士・弁護士など相続に強い、経験豊富な専門家をお引き合わせするサービスです。
「遺産相続ガイド」では、遺産分割や相続手続に関する役立つ情報を「いい相続」編集スタッフがお届けしています。また「いい相続」では、相続に関連する有資格者の皆様に、監修のご協力をいただいています。
▶ いい相続とは
▶ 監修者紹介 | いい相続
相続税に関する他の記事
- 現預金のみの遺産が一番損⁉相続財産ケース別チェックポイント
- 農地の相続税には、納税猶予特例の 活用がおすすめ!
- 相続税の修正申告が必要なケースとペナルティー、加算税と延滞税
- 多すぎる弔慰金は相続税の課税対象となることも!?知っておきたい弔慰金と死亡退職金のこと
- 相続税の計算で相続財産から控除できる葬式費用とは?
- 2月23日は税理士記念日|記念日の由来と相続相談するときの注意点
- 相続税還付|納め過ぎた税金が戻ってくる?還付請求のポイントと手続きの流れ
- 相続税は電子申告が可能に!e-Taxで提出する際の注意点とは?
- 相続税の障害者控除の税額控除に必要な適用要件と控除額算出方法
- 相続税対策を税理士に依頼するケースと依頼内容|税理士の選び方や相場は?