相続時精算課税制度の適用後の相続税申告書の書き方と添付書類

相続人の中に相続時精算課税適用者がいる場合、相続税の申告はどのように行えばよいのでしょうか?
この記事では、申告が必要になるケース、相続税申告書の書き方、添付書類等についてわかりやすく説明します。
相続時精算課税制度とは
相続時精算課税とは、1人に対して累計で2,500万円までの贈与について贈与税が課税されず、相続が発生したときにその贈与された金額と相続財産を合算して相続税額を算出する制度です。
生前贈与をおこなう場合、受贈者(贈与を受ける人)は、2つの課税制度の「暦年課税制度(暦年贈与)」と「相続時精算課税制度」のどちらかの制度を選ぶことができます。
一方、暦年課税制度(暦年贈与)とは、贈与税の申告時に相続時精算課税を選択しない限りは、暦年贈与が適用されます。
令和6年1月からの相続時精算課税制度
令和5年度の税制改正により、令和6年1月以降は、相続時精算課税制度の内容が一部変わります。
2500万円以外に毎年110万円の非課税に!
令和6年以降に相続時精算課税を選択すれば、先述の2500万円以外に毎年110万円ずつ贈与していてもそれには贈与税はかからず贈与税の申告も不要になります。(「相続時精算課税選択届出書」の提出は必要です。)
これを、相続時精算課税の基礎控除といいます。
2人以上の相続時精算課税制度を活用した贈与者(特定贈与者)からの贈与を受けた場合の基礎控除額110万円は、それぞれの贈与税の課税価格で按分します。
110万円の非課税分は生前贈与加算対象外(持ち戻しなし)
さらに、この相続時精算課税の基礎控除の110万円については、生前贈与加算として持ち戻しをしなくてよいこととなります。
つまり改正後の令和6年1月以降は相続時精算課税を選択すれば、毎年110万円贈与していてもそれに対して相続税も贈与税もかからず無税ということです。
今回の税制改正により、令和6年1月以降は、相続時精算課税制度の内容が一部変わり、使い勝手も節税効果も向上しました。
相続時精算課税制度を利用すると相続税申告は必須?
相続時精算課税制度を利用しても、基礎控除後の課税遺産総額が0(ゼロ)になる場合は、相続税申告は不要です(利用の際には必要書類をそろえて税務署に提出する必要があります)。
しかし、相続税の申告の必要がない場合でも、相続時精算課税を適用した財産について既に納めた贈与税がある場合には、相続税の申告をすることにより還付を受けることができます。この還付を受けるための申告書は、相続開始の日の翌日から起算して5年を経過する日まで提出することができます。
相続時精算課税適用者がいる場合の相続税申告書の書き方
納付すべき税額のある相続時精算課税適用者がいる場合は、相続税申告書の「第11の2表」が必要です。
還付される税額のある相続税精算課税適用者がいる場合は、相続税申告書の「第11の2表」に加えて、「第1表の付表2」が必要です。
上のリンクからそれぞれ用紙(PDF)をダウンロードできます。
それぞれの記入例については以下のものをご参照ください。
添付書類
相続時精算課税適用者がいる場合の相続税申告書の添付書類は次のとおりです。
- 次のいずれかの書類
イ 被相続人の全ての相続人を明らかにする戸籍の謄本(相続開始の日から10日を経過した日以後に作成されたもの)
ロ 図形式の法定相続情報一覧図の写し(子の続柄が実子又は養子のいずれであるかが分かるように記載されたものに限ります。)
※被相続人に養子がいる場合には、その養子の戸籍の謄本又は抄本の提出も必要です。
ハ イ又はロをコピー機で複写したもの - 遺言書の写しまたは遺産分割協議書の写し
- 相続人全員の印鑑証明書(遺産分割協議書に押印したもの)
- 被相続人の戸籍の附票の写し(相続開始の日以後に作成されたもの)(コピー機で複写したものを含みます。)
- 相続時精算課税適用者の戸籍の附票の写し(相続開始の日以後に作成されたもの)(コピー機で複写したものを含みます。)
※相続時精算課税適用者が平成27年1月1日において20歳未満の者である場合には、提出不要です。
まとめ
以上、相続時精算課税適用者がいる場合の相続税申告について説明しました。
相続時精算課税適用者がいる場合は、相続税申告が複雑になるため、相続税に詳しい税理士に相談のうえ進めることをお勧めします。
相続時精算課税を選択した贈与者からの贈与については、2500万円以内であれば贈与税がかからないとはいえ、相続時精算課税を選択した翌年以降の贈与についても贈与税の申告が必要です。
相続税の申告前に、贈与税の申告漏れがないかどうか、税理士と一緒に確認した方がよいでしょう。相続に強い税理士をお探しの方は、e税理士にお問い合わせください。
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