令和3年7月1日「生命保険契約照会制度」開始。相続手続きがちょっぴり楽に!?
「生命保険、何に入ってたっけ?」
生命保険証券を大事にしまっておく方がほとんどだと思いますが、亡くなった方がしまい込んでいて、どの保険会社と契約しているか分からなかったら……。
加えて、現代はインターネットで安く、気軽に保険に入れる時代。その分、管理も記憶も曖昧になりがち。
そんな事態のときに役立つ制度ができました。
2021年7月1日から「生命保険契約照会制度」が開始されたのです。
生命保険契約照会制度って何?
契約者・被保険者がお亡くなりになった場合、認知判断能力が低下している場合において、法定相続人、法定代理人、3親等内の親族などからの照会を生命保険協会が受け付け、照会対象者に関する生命保険契約の有無について一括して生命保険各社に調査依頼を行い、生命保険各社における調査結果をとりまとめて照会者に回答してくれるサービスです。(一般社団法人生命保険協会ホームページより引用)
具体的にはどういうこと?
例をあげて説明すると、自分の親が亡くなったり、判断能力が低下するなどして、生命保険に入っていたかどうかがわからない場合、色々な保険会社に問い合わせをしなくても、生命保険協会のこの制度を利用することでどの保険会社に加入しているかが分かるサービスです。
いままではどうしていたの?
亡くなった方が保険に入っていると言っていたにもかかわらず、それを証明する生命保険証券などのが見当たらない、また、通帳などを見ても保険料を支払った形跡がない場合は、弁護士や法定相続人などが、故人が契約(加入)している可能性のある保険会社に一つ一つ照会する必要がありました。
生命保険協会に所属している保険会社は42社(令和3年5月6日現在)。この42社すべてに個々に問合せをするのはとても労力のいることでした。
制度ができた背景
超高齢社会での問題点、独居者の孤独死、認知症の増加により、家族・本人が生命保険契約を把握しきれなくなることが想定され、顧客本位の業務運営を推進する観点で確実に保険金請求をしてもらうために構築されたとしています。(一般社団法人生命保険協会ホームページより)
これができたらどうなるの?
加入している保険の調査が簡単になる
この制度が開始されたことで、一括で調べることができます。
遺産分割が円滑に進む
保険の捜索期間が大幅に短縮されることにより、保険金請求がスピーディーになることが期待できます。被相続人が加入していた保険契約の死亡保険金(一時受取金)がみなし相続財産となるかの確認が必要だったり、保険金で不動産などの代償分割の代償金として活用するケースもあるからです。
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介護に助かる保険だったときのメリットも
介護状態になった場合に受け取れる保険を契約していた場合は介護施設の入居金などにも使えますので、保険契約の有無を早く知ることは重要です。
また、相続では、相続放棄は3ヵ月以内、相続税の申告は10ヵ月以内と、案外スケジュールが詰まっています。
もし、42社に保険の有無を問い合わせていたら、あっという間に期限が来てしまいます。この制度は、相続手続きの面では非常にありがたいものとなるでしょう
生命保険の請求漏れがなくなる
保険金の請求にも期限が存在します。保険金請求権の時効は「3年」(かんぽ生命の簡易保険の場合の時効は「5年」)なため、もらい忘れを防止できます。
どんな人が利用できる?
利用できる人は以下の要件に該当する方です。
被相続人について照会できる人
照会対象者(被相続人など)の法定相続人、弁護士、司法書士などの生命保険協会が認めた任意代理人などです。
認知判断能力が低下している人について照会できる人
照会対象者(認知判断能力が低下している人)の法定代理人または任意後見制度に基づく任意代理人、3親等内の親族および弁護士などの生命保険協会が認めた任意代理人などです。
申し込み方法は?
インターネットまたは郵送(ただし、郵送する資料はインターネットで入手します)
費用は?
1回の照会につき 3,000円(税込)です。クレジットカードも利用でき、コンビニ払いも可能なのは嬉しいところ。災害時の照会については無料です。
デメリットは?
この制度を悪用されることがないかぎり、今のところはメリットしかありません。しかし、細かい契約内容までは一括照会では分からないこと、利用できる人には先述のような要件があること、照会依頼には所定の手続きや提出書類の準備が必要であること、また、損保、共済などは対象外ということなどの注意点はあります。
まとめ
「相続税対策で生命保険を利用する」と聞いたことがある方も多いでしょう。
これから加入する場合はもちろん、すでに加入している場合でも、どんな保険に入っているのかしっかり管理しておきましょう。せっかく残された方のために掛けた保険、その思いをすぐに届くように準備しておくのも相続対策の一つではないでしょうか。
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