マンションを相続したときにすること、相続後に住む、貸す、売るときのポイント解説
親が住んでいた分譲マンションを相続した場合、そのマンションはどうするのがよいのでしょうか。住む以外に、賃貸に出す、売却する、という選択肢もありますが、いずれの場合も、マンションにかかる税金や維持費などについて把握しておくことが大切です。
この記事では、マンションの相続に際してやるべきこと、マンション相続後の3つの選択肢とそれぞれのメリット・デメリットについて、詳しくご説明します。
また、マンションをどう活用するかと同時に、相続税がどのくらいかかるのかも気になるところです。あわせて説明します。
この記事はこんな方におすすめ:親が分譲マンションに住んでいる方、マンションを相続する可能性がある方、親のマンションを相続したときの相続税が気になっている方
- マンションを相続したら、早めに金融機関・管理組合へ連絡
- 選択肢は、「住む」・「貸す」・「売る」の3つ
- どの選択肢を選んでも、相続登記は必要
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分譲マンションに住んでいた親が亡くなったときにやること
葬儀や役所への届出等、あわただしいときではありますが、遺産相続時に大変な手続きの一つである不動産については、なるべく早く動き出した方がいいでしょう。
分譲マンションに住んでいた親が亡くなったときにするべきことは以下の3つです。
-
- 1.住宅ローンの確認
- 2.マンションの管理組合への連絡
- 3.公共料金などの名義変更・解約
それぞれについて解説していきます。
1.住宅ローンの確認
マンションを購入する際には、住宅ローンを組まれる方がほとんどです。まずは、故人が借り入れた住宅ローンが残っているかどうかを確認します。完済されていれば特段の手続きは不要ですが、返済中であれば、借入元の金融機関に連絡し、必要な手続きを確認しましょう。
金融機関での手続き
- 故人が団体信用生命保険(団信)に加入している場合
ローンの残債は保険金で返済されますので、以後の返済資金について心配する必要はありません。保険金請求(債務弁済)手続きは、金融機関に確認しておこなってください。 - 団信に加入していなかった場合や親子リレー返済を利用している場合
ローンの残債を返済しなければなりません。金融機関に連絡し、残高確認と必要な手続きを行います。
2.マンションの管理組合への連絡
一戸建てと違い、マンションには管理費や修繕積立金が必要です。毎月口座振替で支払っていることが多いので、今後の支払方法や未納分の有無について管理組合へ確認します。
敷地内の駐車場や駐輪場などを使用している場合、継続して使用するかどうかを連絡し、名義変更や解約など必要な手続きをあわせて確認しましょう。
3.公共料金などの名義変更・解約
電気、ガス、水道、電話、NHKなど故人の名義で契約しているものは、状況に応じて名義変更または解約しましょう。
- マンションに故人以外のご家族が住んでいる場合:契約者の名義と支払方法の変更
- マンションにしばらく誰も住む方がいない場合:使用停止、解約など
手続きと同時に、未納分の有無も確認しましょう。
ローン残高のほか、未納となっている管理費・修繕積立金、公共料金や固定資産税などは故人の債務で、マイナスの相続財産となります。相続税計算にも必要ですので、なるべく早く債務の額を確定させましょう。
相続したマンション、どうする?3つの選択肢
マンションを相続した際に最もやってはいけないのは放置です。マンションの資産価値は変動しますが、一般的には経年により下がるため、可能な限り早く決断しましょう。
さらに、マンションは所有しているだけで固定資産税や、管理費、修繕積立金などの維持費がかかります。また、適切に管理・清掃しないと劣化が早まり資産価値が下がってしまいます。
相続したマンションの活用方法としては、次の3つの選択肢があります。
① 住む
② 貸す
③ 売る
①~③それぞれの選択肢について、メリット・デメリットをご説明していきます。
① 住む
相続したマンションにすでに相続人が住んでいる場合は引き続き居住するという選択が多いようです。
また、今後住むのに便利な立地であれば、相続をきっかけに、ほかの場所で暮らしていた方が移り住むこともあります。
メリット
- (相続以前から居住していた場合)住み慣れた土地・住居で、近隣住民や周辺の状況も把握しているため、これからの生活がイメージしやすい
- 家族の思い出のマンションを手放さずにすむという、心理的メリットもある
デメリット
- 固定資産税や都市計画税が相続人の負担になるため、これらの税金を支払い続ける必要がある
- 相続人がすでに別の場所に自宅(マンション含む)を購入して住んでいる場合は、相続手続きに加えて、売却・住み替え等の手間がかかる
② 貸す
相続したマンションに住む予定がない場合や、マンションが遠方にある場合は、賃貸として人に貸し出すという選択肢もあります。
賃貸に向いているマンションは、築年数が浅いものや人気エリアにある、借り手がみつかりやすい物件です。
マンションの近隣の不動産会社に相談して、査定や相場の確認、需要の有無、家賃収入と維持費を比較して採算がとれるかなどを確認しましょう。
メリット
- 家賃収入により一定の不労所得が得られ、維持費をまかなうこともできる
- 次の世代にも相続できる資産が残る
- 人が住むことによって換気・清掃などがおこなわれ、家の劣化スピードが遅くなる
- 自宅以外に他の場所にも住めるところがあるという、心理的安心感がある
デメリット
- 賃借人が快適に住めるようにリフォームや修繕が必要なため、費用と手間がかかる
- 不動産会社に仲介や管理を依頼する場合は、不動産会社に手数料を支払う必要がある
- 空室状態が続くと、維持費を自己負担しなければならないため、事前の入念なシミュレーションが必要
- 賃借人の部屋の使い方が雑な場合は、室内の汚れや傷みにより修繕費がかさむケースも
③ 売る
すでに持ち家がある場合や、遠方で管理することが難しい場合は、売却するのも選択肢の一つになるでしょう。マンションによっては今後、大規模修繕が必要になる可能性もあり、修繕積立金の値上げが予定されていることもあります。売却すれば、それ以降は維持費はかかりませんし、管理などのわずらわしさもありません。
いくらで売却できるのかが最も気になるところですが、不動産の一括査定サイトを利用すると、複数の不動産会社に無料で売却査定を依頼でき、各社の査定価格を比較することができます。
メリット
- 維持・管理の費用や手間がかからない
- 売却益により、まとまった現金が得られる(※ただし、売却するまでに時間を要するケースもある)
デメリット
- 予想以上に高く売れた場合に、他の相続人から不満が出ることがある
- 資産を売却することによって生ずる所得には、譲渡所得税が課される(※取得費加算の特例という控除制度あり)
- 思い出の詰まったマンションを売ることになり、寂寥感に苛まれることも
売却査定額
マンションの立地条件、築年数などから「売却できそうな価格」として不動産会社が算出した価格です。その価格で、実際に売れることもありますが、売れないこともあります。また、不動産会社が買い取る価格ではありませんので、注意してください。
分譲マンションを相続したときの相続税
相続税の納税は、被相続人が死亡したことを知った日(通常の場合は、被相続人の死亡の日)の翌日から10か月以内におこなう必要があります。
分譲マンションを相続したとき、遺産総額が基礎控除を超える場合、相続税が課税されます。
分譲マンションの相続税評価額の計算
分譲マンションでは多くの場合、敷地は区分所有者全員で共有しているため、土地の相続税評価額は、敷地全体の評価額に敷地権割合を乗じて算出します。敷地権割合とは、マンションの専有部分の総床面積に対する各専有部分の面積の割有です。
敷地権割合=各専有部分の面積÷専有部分の総床面積
建物については戸建てと同じで、固定資産税評価額=相続税評価額となります。
分譲マンションの相続税評価額は、上記の①+②となります。
【例】以下の条件のときのマンションの相続税評価額は?
- マンション全体の敷地面積:10,000㎡
- 路線価:40万円/㎡
- 敷地権割合:5,000/2,000,000
- 建物の固定資産税評価額:800万円
(40万円×10,000×5,000/2,000,000)+800万円=1,800万円
住宅ローンと相続税の債務控除
住宅ローンの残債は、団体信用生命保険(団信)の保険金で返済されるかどうかで、相続税を計算する際の債務控除の対象となるかどうかがかわります。
団体信用生命保険により返済が免除される住宅ローンは、相続人が支払う必要のない債務ですので、相続税の課税価格の計算上、債務として差し引くことはできません。
団信の保険金で返済される住宅ローン:債務控除の対象外
団信に加入していない(団信に加入していても、保険金が支払われない)場合:債務控除の対象
債務控除
相続税を計算するときは、故人(被相続人)が残した借入金などの債務を遺産総額から差し引くことができます。相続財産の価額から差し引くことができる債務は、被相続人が亡くなられたときにあった債務で確実と認められるもので、借入金や未払金などのほか、被相続人が納めなければならなかった税金の未納分も含まれます。
どの選択肢を取るか、迷ったときの考え方
ここまで、相続したマンションの活用方法について説明してきました。しかし、居住すべきか賃貸に出すべきか売却すべきか、なかなか決めきれない方もいると思います。
その場合は次の2点を検討してみてください。
将来的に住む可能性があるか?
賃貸に出すか売却するかの判断基準のひとつとなるのが、将来的に相続したマンションに住む可能性があるかどうかです。ご自身だけでなく、子どもや親族が住む見込みがあるならば、資産として残しておくことを検討しても良いでしょう。将来住むことになるまでの間、賃貸に出してどのように収益を上げていくかを考えます。あらかじめ定めた契約期間のみ賃貸に出す定期借家契約という方法もあります。
一方、将来的に誰も住む可能性がない場合は、マンションをただ放置していても、時が経てばたつほど資産価値は下がってしまいますので、資産価値がもっとも高い段階で売却できるよう、早めに行動に移しましょう。
借り手・買い手のニーズがあるか?
賃貸に出すにしても売却するにしても、利益を得るためには需要があることが前提です。その地域にニーズがあるかをしっかり把握し、賃貸か売却かを決めましょう。困ったときは、その地域に精通し、地元ならではの情報を知っている地元の不動産会社に相談するとよいでしょう。
相続登記について
さて、ここまで、相続したマンションの活用方法と選択の際の判断基準についてご説明してきました。ただ、これらの選択肢は、相続手続きがきちんとおこなわれてこそ検討できるものです。
相続したマンションを売却する場合も、賃貸に出す場合も、マンションの登記簿上の所有者が相続人に変更されていること(相続登記)が必要です。相続登記が完了するまでは売買契約も賃貸契約も締結できないので、速やかに手続きをおこないましょう。
相続登記は令和6年4月1日から手続きが義務化されています。相続によって不動産を取得した相続人は、相続により所有権を取得したことを知った日から3年以内に相続登記の申請をしなければならないこととされました。正当な理由がないのに申請を怠ったとき、10万円以下の過料の対象となります。
相続登記は、マンションの所在地を管轄する法務局で申請します。相続人がご自身で手続きすることも可能ではありますが、被相続人の戸籍や遺産分割協議書、相続関係説明図といったなじみのない書類が多く必要とされるため、一度、専門家に相談してみてはいかがでしょうか。
まとめ
マンションを相続すると相続税がかかることがありますし、固定資産税などの維持費もかかります。売るか相続するか、それぞれシミュレーションして判断するといいでしょう。判断に迷った場合は、税理士などの専門家に相談してください。
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この記事を書いた人
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