相続したマンションの売り方|確認すべきことと売却までの流れ(手順)
遺産分割協議や遺言により、親が住んでいたマンションを相続し、売却することに決めた場合、どのようなことをしたらよいのでしょうか。この記事では、実際にマンションを売却する方法をわかりやすく解説していきます。
- 親が住んでいたマンションについては、売り出し前の確認・準備が大切
- 売却活動をうまく進められるように、相続登記の準備や荷物撤去は早めの着手がおススメ
- 査定は複数社へ依頼し、売却方法、売却希望価格と最低売却額を決定
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マンション売却までの流れ(手順)
相続したマンション売却のおおまかな流れは以下のとおりです。
確認・書類の準備
親が住んでいたマンションについては、一緒に住んでいないと案外把握できていないことがたくさんあります。不動産会社に査定を依頼する前に(または同時並行で)、以下を確認・準備します。
これらを怠ると、この後のマンション売却活動がうまく進められなくなることもあります。しっかり、準備しましょう。
住宅ローンの残高
故人が借り入れた住宅ローンが完済されていない場合は、ローン残高を確認します。
売却により得た資金で残高を返済できない場合は、差額分を自己資金で準備しなければなりません。マンション売却のために準備できる自己資金の額についても確認が必要です。
大規模修繕等の予定と修繕積立金
マンションでは、大規模修繕等のために修繕積立金の増額や一時金徴収が予定されていることがあります。その場合は重要事項として買手に説明しなければなりません。
大規模修繕の予定や、既に決定している増額や一時金徴収がないか、管理組合に確認しましょう。
周辺の実際の取引価格
国土交通省の「土地総合システム」で調べることができます。相続したマンションと条件が一致または類似した取引事例がみつからなかったとしても、おおよそのマンション相場を調べることができます。
マンションの売却に必要な書類の準備
以下がマンション売却時に必要な主な書類です。故人が保管していたものと、役所等で取得しなくてはならないものがありますので、早めに準備しておきましょう。
- 登記済権利証(登記識別情報)
- 間取図
- マンション管理規約・使用規則
- 固定資産税納税通知書または評価証明書
- ローン残高証明書(ローン返済中の場合)
- 相続人の印鑑証明書 など
上記以外の書類が必要になる場合もありますので、必ず売買契約前に不動産会社に確認してください。また、相続人の印鑑証明書はあまり早く準備すると、売買契約時に期限切れとなってしまうため、タイミングをみて準備しましょう。
相続登記の準備
マンションの名義が故人のままになっている場合は、故人から相続人へ名義変更(相続登記)が必要です。相続人への名義変更を省略して故人から買手に直接名義変更することはできません。
相続登記が完了するまで、査定依頼や媒介契約締結ができないわけではありませんが、相続登記の準備は早めにしておきましょう。
相続登記には以下の費用がかかります。
-
- 登録免許税:固定資産税評価額×0.4%
マンションの固定資産税評価額=敷地全体の評価額×敷地権割合+建物専有部分の評価額
- 司法書士への報酬:地域やマンションの評価額にもよりますが、6万円~10万円
- 必要書類(故人の戸籍謄本等)の取得費用:被相続人の状況にもよりますが、5,000円~20,000円程度(遺産分割協議などで用意した書類で、使用できるものもあります。)
荷物の撤去
マンションを買手に渡すときには、原則、マンション内を空にしなくてはなりません。マンション内にある故人の荷物・家具は案外多いです。形見分けも含めて保存しておくものと廃棄するものに仕分けし、マンションから撤去するには相当な時間と労力を要するかもしれません。遺品整理業者などに依頼してみるのもよいでしょう。
マンションの査定依頼
売却査定額・買取査定額
マンションの査定額には「売却査定額」と「買取査定額」の2種類があります。
売却査定額は、不動産会社(仲介業者)が「売却できそうな価格」と算出した価格で、実際にその価格で売れない場合もあります。
買取査定額は、不動産会社などが買主となって直接買い取る価格です。不動産会社などは買取後にリフォームやリノベ―ションして再販売するため、買取査定額は市場価格(売却査定額)の70~80%程度となることが多いようです。
査定金額と併せて、信頼できる不動産会社(担当者)かどうか、査定依頼時の対応もチェックしておきましょう。
なお、インターネットで一括査定サイトを活用すると、効率よく複数社へ査定を依頼でき、査定額を比較できます。
売却方法の決定
マンションの売却方法には、大きく分けて「仲介」と「買取」の2つの方法があります。
仲介:不動産会社に買手を探してもらう
買取:不動産会社(マンション買取業者)などに直接買い取ってもらう
【メリットとデメリット】
メリット | デメリット | |
---|---|---|
仲介 | 〇 相場価格(買取よりも高額)で売却しやすい | △ 売却に時間がかかる可能性あり △ 仲介手数料がかかる |
直接買取 | 〇 早期の売却(現金化)が可能 〇 仲介手数料がかからない※ |
△ 売却額は市場価格の70~80% (仲介よりも安い) |
※直接買取ではなく、買取業者を仲介業者に探してもらう場合は仲介手数料がかかる場合がありますが、「いい不動産」では、仲介手数料はかかりません。
高額で売却できるに越したことはないのですが、マンションの立地条件や築年数、修繕計画などによっては、仲介による売却が難しいケースもあります。売却にあたって何を重視(優先)するかによって、仲介か買取かを選択するとよいでしょう。
媒介契約締結
不動産会社と媒介契約を交わします。媒介契約には「一般媒介契約」「専任媒介契約」「専属専任媒介契約」の3種類あり、1社だけに依頼するか、複数社に依頼できるかなどの条件が異なります。
ここでは簡単に違いを説明します。
一般媒介契約 | 専任媒介契約 | 専属専任媒介契約 | |
---|---|---|---|
依頼先 | 複数社 | 1社のみ | |
自分で買手を見つけた取引(自己発見取引) | 可(仲介手数料不要) | 不可(不動産会社を媒介者として売買契約、仲介手数料必要) | |
指定流通機構(レインズ)への登録義務 | なし (任意登録可) |
あり(媒介契約を締結した翌日から7日以内) | あり(媒介契約を締結した翌日から5日以内) |
販売状況の報告義務 | なし | あり(14日に1回以上) | あり(7日に1回以上) |
不動産会社の熱心度は、「専属専任媒介 ・ 専任媒介 > 一般媒介」となりますが、「専属専任媒介」と「専任媒介」には大きな差がないため、実務上、専属専任媒介契約が選ばれることはあまり多くないようです。
媒介契約の種類にかかわらず、マンション売却に強く、信頼できる不動産会社(担当者)を選ぶことが大切です。
「レインズ(REINS)」とは宅地建物取引業法に基づき、国土交通大臣から指定を受けた「指定流通機構」である全国で4つの公益社団法人や公益財団法人によって運営されているコンピューターネットワークシステムです。
「Real Estate Information Network System(不動産流通標準情報システム)」の英語の頭文字を並べて名付けられ、組織の通称にもなっています。
マンションの売却活動
価格設定
不動産会社へ、売却希望価格と最低売却額(これを下回る場合は売却しない額)を伝え、最初の売出価格を決めましょう。マンション売却にかかる平均的な期間は3~4ヵ月ですが、それ以上の期間がかかる場合もあり、価格の見直しが必要になるかもしれません。その場合に備えて、最初に最低売却額を明確にしておくことが必要です。
「内見(内覧)」準備
購入を検討している方の多くは、実際にマンションを見に来ます。荷物を撤去し、ハウスクリーニングなどをして、きれいに片付けておきましょう。
また、どのような設備(エアコンやインターホンなど)が付いているのか、付帯設備一覧を必ず作成しておきましょう。
売買契約締結
直接買取の場合は不動産買取業者と、仲介の場合は不動産媒介(仲介)業者が探してくれた買主(主に個人)と売買契約を締結します。
決済・引き渡し・登記
買手が決まったら、売却代金の決済、マンションの引き渡し、売却後の登記を行います。
売買契約書には、登記や固定資産税の負担、荷物撤去などについて売主・買主双方の義務が定められています。
不動産会社に必要な手続きや契約内容を確認し、滞りなく売却を完了させましょう。
売却時に必要な費用
マンション売却時には以下のような費用がかかります。
仲介手数料
仲介手数料の金額については、宅地建物取引業法で以下のように売買価格によって上限が定められています。
■仲介手数料の上限額
売買価格 | 仲介手数料 |
---|---|
200万円以下の部分 | 取引額の5%以内 |
200万円超400万円以下の部分 | 取引額の4%以内 |
400万円超の部分 | 取引額の3%以内 |
※売買価格には消費税を含みません。仲介手数料には別途消費税がかかります
売買価格が400万円を超える場合は、上記をまとめて以下の計算式で求められます。
ただし、400万円未満の物件(低廉の物件)では、最大で18万円+消費税がかかる場合があります。
出典:国土交通省HP 昭和45年建設省告示第1552号
【印紙税】
不動産の売買契約書には印紙税がかかりますが、2014年(平成26年)4月1日から2022年(令和4年)3月31日までに作成される契約書は軽減措置の対象となります。
軽減後の税率は下表のとおりです。
契約金額 | 本則税率 | 軽減税率 |
---|---|---|
10万円を超え50万円以下のもの | 400円 | 200円 |
50万円を超え100万円以下のもの | 1,000円 | 500円 |
100万円を超え500万円以下のもの | 2,000円 | 1,000円 |
500万円を超え1,000万円以下のもの | 10,000円 | 5,000円 |
1,000万円を超え5,000万円以下のもの | 20,000円 | 10,000円 |
5,000万円を超え1億円以下のもの | 60,000円 | 30,000円 |
1億円を超え5億円以下のもの | 100,000円 | 60,000円 |
5億円を超え10奥円以下のもの | 200,000円 | 160,000円 |
10奥円を超え50億円以下のもの | 400,000円 | 320,000円 |
50億円を超えるもの | 600,000円 | 480,000円 |
注) 不動産の譲渡に関する契約書のうち、その契約書に記載された契約金額が10万円以下のものは、軽減措置の対象となりません(税率200円)。また、契約書に記載された契約金額が1万円未満のものは非課税となります。
出典:国税庁HP 不動産売買契約書の印紙税の軽減措置
まとめ
この記事では親が住んでいたマンションを相続し、売却する場合の確認事項・準備や売却までの手順などについて説明してきました。相続したマンションについては、親の生前に何度も訪れていたとしても、住宅ローンの残高や修繕積立金などについて把握している方は少ないと思われます。管理費や修繕積立金、固定資産税などが未納になっていたり、家具や荷物が残っていたりすると、売却後にトラブルになる可能性もあります。売却を検討する場合には、資金計画も含め、信頼できる不動産の専門家や税理士などに相談してみることをおすすめします。
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この記事を書いた人
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