相続税に強い税理士の選び方と費用の相場、相談から申告までの流れ
相続税の基礎控除額を超えて遺産がある場合は、相続税がかかります(相続税の基礎控除については「相続税の基礎控除額の計算方法と控除額を増やして節税する実践的な方法」参照)。
相続税の基礎控除額が2015年の法改正によって減額になったため、相続税の課税対象となるケースが増えています。
この記事では、相続税の申告手続きに当たって、税理士を選ぶ際に必要な情報をわかりやすく説明します。
是非、参考にしてください。
相続税申告に税理士は必要?税理士に依頼するメリット
相続税申告に必ずしも税理士は必要ではありません。
自分で申告しても構いません。
しかし、税理士に依頼すると、次の2つのメリットがあります。
- 大きく節税できる可能性がある
- 手間がかからない
以下、それぞれについて説明します。
税理士に依頼すると大きく節税できる可能性がある
多くのケースでは、相続税に強い税理士に依頼することで節税が可能です。
相続税は、遺産の評価額をなるべく低くなるように算定したり、各種の非課税制度の適用を受けることによって、節税することができるのです。
特に土地については、その形状等に応じて様々な減額評価の方法があり、利用できる減額制度を漏れなく利用することが大きなポイントになります。
例えば、小規模宅地等の特例の適用を受けると、評価額を最大で8割引きにすることができますが、なるべく地価の高い土地に適用させた方が節税効果が高くなるため、その意味では特例の適用を受けることができる人に地価の高い土地を相続させた方が良く、どのように遺産分割をするかという点も節税にかかわってきます(小規模宅地等の特例について詳しくは「小規模宅地等の特例で8割減で大幅に節税する方法と意外な落とし穴」参照)。
また、相続税に強い税理士であれば、「配偶者の税額軽減」(いわゆる「相続税の配偶者控除」)等の他の非課税制度を併用した場合にどのように組み合わせれば節税効果が高まるかといったことや、二次相続(配偶者に先立たれた人が亡くなった際の相続)まで考慮して、どのように遺産分割をした方が節税になるかといったことも考えたうえでアドバイスをすることができます(配偶者の税額軽減について詳しくは「相続税配偶者控除で1億6千万円を非課税にする方法とそのデメリット」を、二次相続については「二次相続対策をシミュレーションして万全にするために必要な全知識」をそれぞれご参照ください。)。
税理士に依頼すると手間がかからない
税理士に依頼すると、次の2つの手間を削減することができます。
- 相続税申告
- 税務調査対応
以下、それぞれについて説明します。
相続税申告
相続税の申告には、大きな手間がかかります。
税理士がやっても1か月以上かかる大仕事ですが、不慣れな一般の人が行うと、より長い期間、対応に追われることになるでしょう。
相続税申告について詳しくは「相続税の申告が不要なケース、自分で申告する方法と申告期限」をご参照ください。
税務調査対応
相続税の税務調査とは、相続税の申告漏れが無かったかどうかを確認するための税務署による調査のことです。
相続税の申告事案(相続税額があるもの) のうち、税務調査の実地調査(税務署の調査官等が被相続人(亡くなった人)や相続人の自宅等を訪問して行う調査)が行われる割合は約2割です。
そして、実地調査の結果、申告漏れ等が見つかった件数(非違件数)は9,930件、非違割合は82.0%です。
税務署は、対象者をランダムに選定しているわけでありません。
税務調査では、実地調査を行う前に、事前調査が行われており、その事前調査の結果、怪しいものをピックアップして実地調査を行っています。
事前調査では、主に次の2点が見られています。
- 相続税申告書の計算や評価に誤りがないかどうか
- 相続税申告書に相続財産の計上漏れがあるかどうか
したがって、適切な申告を行うことで、税務調査の実地調査の対象となる可能性を大幅に低減させることができます。
また、税務調査が入った場合でも、税理士に同席してもらって対応してもらうことができるため、負担を軽減し、適切な対応をとることができます。
相続税の税務調査について詳しくは「相続税の税務調査の実態と対策〜何年後?通帳やタンス預金も対象?」をご参照ください。
また、税理士に依頼すると、書面添付制度を利用することで、税務調査が入る可能性をさらに下げることができます。
書面添付制度とは、計算事項等を記載した書面を税理士が作成して申告書に添付した場合は、税務調査前に、まず、税理士に対して、添付された書面の記載事項について意見を述べる機会が与えられるというものです。
そして、この段階で疑義が解消し、結果として調査の必要性がないと認められた場合には、調査に至らないこともあり得ます。
書面添付制度は、税理士に依頼しなければ利用することはできません(税理士に依頼せずに自分で申告する場合は利用できません)。
相続税申告の税理士費用(報酬)の相場
相続税申告の税理士費用(報酬・料金)は、統一された金額があるわけでなく、税理士事務所ごとに異なります。
通常、遺産総額に応じた変動制の報酬体系になっています。
相場としては、遺産総額の約1%前後ですが、遺産が多額の場合は、ボリュームディスカウントがあることが多いようです。
具体的には、下の表のような費用感になっています。
なお、税理士報酬算定の基礎となる遺産総額は、プラスの財産の総額のことで、債務や基礎控除などの各種控除をする前の金額です。
遺産総額 | 税理士報酬額 |
---|---|
〜5000万円 | 20万〜50万円 |
5000万〜7000万円 | 25万〜70万円 |
7000万〜1億円 | 35万〜100万円 |
1億〜3億円 | 50万〜150万円 |
3億〜5億円 | 60万〜200万円 |
5億〜10億円 | 150万〜300万円 |
なお、遺産総額によって決まる税理士報酬額は、あくまで基本報酬額であって、事情に応じて報酬額が加算されます。
基本報酬には、通常、次のような費用が含まれています。
- 財産評価
- 遺産分割協議書の作成
- 相続税申告
- 添付書面の作成
そして、報酬額が加算されるケースとしては、次のような場合が挙げられます。
- 遺産に土地が含まれる場合
- 地積規模の大きな宅地の評価の適用を受ける場合(「地積規模の大きな宅地の評価が適用できるケースと評価額の計算方法」参照)
- 遺産に非上場株式が含まれる場合
- 相続人が複数の場合
- 預貯金の移動が複雑で特別な調査を要する場合や名義預金が疑われる場合(「名義預金にかかる相続税と贈与税、名義預金とみなされないための対策」参照)
- 申告期限が迫っている場合
- 添付書面に対する意見聴取を受けた場合
- 税務調査に立ち会った場合
- 修正申告が必要な場合(遺産未分割のまま申告した場合等)
- 現地調査や訪問面談の際の旅費・交通費
- 戸籍謄本等の資料の取得代行費用(手数料及び実費)
相続税に強い税理士の選び方
相続税に強い税理士の選び方の主なポイントは次の5点です。
- 費用・報酬の仕組みが分かりやすい
- 書面添付制度を利用している
- 税務調査の立会いにも対応している
- セカンドオピニオンを嫌がらない
- 事情に応じた節税策を提案・実行できる
- 相続税申告の実績が豊富
以下、それぞれについて説明します。
費用・報酬の仕組みが分かりやすい
報酬の仕組みが明瞭であるかどうかは、税理士選びにおいて重要なポイントです。
報酬の仕組みが明瞭であれば安心して依頼することができますし、また、報酬の仕組みが明瞭であるということは、相続税の申告経験が豊富であることも意味していると考えらえます。
何にどのくらいの手間がかかるのか予見できなければ、事前に報酬額を決定できないためです。
なお、重視すべきは仕組みの分かりやすさであって、報酬の多寡そのものではありません。
報酬が多少高くても、それ以上に節税に長けていれば、税理士費用+相続税額のトータルで見れば安くなることも多いためです。
書面添付制度を利用している
書面添付制度を利用することで、税務調査が入る可能性を下げることができます。
書面添付制度とは、計算事項等を記載した書面を税理士が作成して申告書に添付した場合は、税務調査前に、まず、税理士に対して、添付された書面の記載事項について意見を述べる機会が与えられるというものです。
そして、この段階で疑義が解消し、結果として調査の必要性がないと認められた場合には、調査に至らないこともあり得ます。
書面添付制度は、すべての税理士が利用できますが、全員が利用しているわけではありません。
書類添付制度の利用は、依頼者にとってはメリットが大きいのですが、税理士にとっては負担も大きいためです。
書類添付制度を利用すると、単純に書類作成の手間も増えますし、相続税額の算定に至る前の過程を事細かくしたためるわけですから、算定額だけでなく、その過程の一つ一つにおいても間違いがあってはならず、税理士の責任が重くなるのです。
このような事情から、経験の浅い税理士は書面添付制度の利用を嫌がる傾向があるのです。
したがって、書類添付制度の利用は、それ自体が依頼者のメリットでもありますし、制度を利用しているかどうかで税理士の経験値を計ることもできるのです。
税務調査の立会いにも対応している
税理士が携わった税の申告に対して税務調査が入った場合は、ほとんどの税理士は、その立会いに対応するでしょう(別途、日当は必要でしょうが)。
もし、調査の立会いには応じないという税理士がいるならば、依頼するのは避けた方がよいでしょう。
セカンドオピニオンを嫌がらない
相続税額は依頼した税理士によって大きく異なることがあります。
そのため、相続税額が算定されたら、それをもって他の税理士にセカンドオピニオンを聴くことで、さらなる節税の余地を見出せることもあります。
依頼者がセカンドオピニオンを聴くことを嫌がる税理士は、算定結果に対する自信のなさの表れかもしれません。
初回の相談時に、セカンドオピニオンを聴くことも検討している旨を伝えて反応を見ることで、税理士の自信のほどを知ることも可能でしょう。
事情に応じた節税策を提案・実行できる
相続税はいくらでもよいから申告さえできればよいという人はあまりいないでしょう。
多くの人は不必要な相続税は納めたくはないでしょう。
相続税額の算定に当たっては、多数の評価減や非課税の制度があり、事情に応じて、どの制度の適用を受けられるかを検討し、さらに、どのように遺産分割するかによって、特例の適用を受けた際の効果が異なることもあるので、遺産分割方法については、円満相続の観点に加えて、節税面からも検討すべきでしょう。
また、相続人が配偶者と子という組み合わせの場合は、二次相続が生じる可能性が高く、二次相続時にかかる相続税まで考えて遺産分割方法を決定した方がよいでしょう。
そして、特に土地については、実に様々な評価減の制度があり、余すところなく評価減を適用させることによって、大幅に節税することも可能なケースがあります。
このような事情に応じた節税策を提案・実行するためのノウハウを持っているかどうかを依頼前の初回相談時に見極めた方がよいでしょう。
相続税申告の実績が豊富
相続税に強い税理士かどうかを見抜くポイントについて説明しましたが、実際に見抜くのは難しいと感じるかもしれません。
よく分からない場合は、相続税申告実績で比較するとよいでしょう。
年間50件以上の相続税申告実績のある事務所であれば、経験豊富と言えるでしょう。
実績が公開されていない場合は、面談の際に確認するとよいでしょう。
また、相続専門の事務所かどうかはそれほど気にしなくてもよいでしょう。
大きな事務所の場合は、事務所としては相続に特化していなくても、相続部門の税理士は相続専門ということもあります。
いつ相談すべき?
税理士に相談するタイミングは、基本的には、早ければ早いほど望ましいでしょう。
資産の多い方は、生前から相談しておくと、相続税対策の幅が広がります(「相続税対策で無駄なく節税するために知っておくべきすべてのこと」参照)。
相続開始後に相談する場合は、四十九日の法要が終わったくらいには相談した方がよいでしょう。
どのように遺産分割するかによって、節税できる幅が変わってくることがあるので、遺産分割協議に入る前に相談し、相続税対策も考慮して遺産分割を協議するとよいでしょう。
相談から申告までの流れ
相談から申告までの流れは、概ね次のようになります。
- 面談予約
- 面談
- 業務内容と費用の見積もり
- 契約
- 資料の収集
- 財産の調査と評価、財産目録の作成
- 遺産分割に関する助言、遺産分割協議書の作成
- 相続税申告書の作成
- 納税方法に関する助言
- 相続税申告
- 相続手続き等の代行
最後の相続手続きについては、税理士に依頼しなくても構いませんが、相続税に強い税理士事務所は、通常、司法書士等の他の専門家と提携しており、まとめて依頼することが可能なので、窓口を一元化でき面倒がありません。
まとめ
以上、相続税に強い税理士の選び方について説明しました。税理士をお探しの方はお気軽にご連絡ください。
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この記事を書いた人

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