相続税の未成年者控除を適用して相続税を安くする簡単な方法
未成年の相続人は、相続税の未成年者控除を受けられ、その分、相続税が安くなります。
相続税の税額は税務署が計算してくれるわけではなく、税理士に依頼するか、自分で計算して申告しなければなりません。
税理士に依頼する場合は未成年者控除を適用させて税額を計算してくれますが、自分で申告する場合は、適用漏れがないように注意しましょう。
この記事では、未成年者控除についてわかりやすく説明します。
相続税の未成年者控除とは?
相続税の未成年者控除とは、相続人が未成年者の場合に利用できる相続税の軽減制度のことです。
未成年者控除が受けられる人
未成年者控除が受けられるのは次のすべてに当てはまる人です。
- 相続や遺贈で財産を取得したときに日本国内に住所がある人(一時居住者で、かつ、被相続人が一時居住被相続人又は非居住被相続人である場合を除きます。)又は、相続や遺贈により財産を取得したときに日本国内に住所がない人でも次のいずれかに当てはまる人
- 日本国籍を有しており、かつ、その人が相続開始前10年以内に日本国内に住所を有していたことがある人。
- 日本国籍を有しており、かつ、相続開始前10年以内に日本国内に住所を有していたことがない人(被相続人が、一時居住被相続人又は非居住被相続人である場合を除きます。)。
- 日本国籍を有していない人(被相続人が、一時居住被相続人、非居住被相続人又は非居住外国人である場合を除きます。)。
※「一時居住者」については、相続人が外国に居住しているときのQ相続税の納税義務者の範囲等をご覧下さい。
※「一時居住被相続人」、「非居住被相続人」及び「非居住外国人」については、相続人が外国に居住しているときをご覧下さい。
- 相続や遺贈で財産を取得したときに20歳未満である人
- 相続や遺贈で財産を取得した人が法定相続人(相続の放棄があった場合には、その放棄がなかったものとした場合における相続人)であること。
1については、日本国内に住所がない場合の要件が細かく設定されていますが、日本国内に住所がある人にとっては、1の細かい要件は関係がないので、2と3の要件を満たせば未成年者控除を受けられます。
2については、財産取得時(相続開始時)に未成年(20歳未満)でなければならないということです(なお、民法改正によって、2022年4月1日以降は、未成年は18歳未満となります。)。遺贈とは、遺言によって財産を取得させることです。
3については、法定相続人でない人が遺贈によって財産を取得した場合や、先順位の相続人が相続放棄したことによって相続人となった場合は、未成年者でも未成年者控除を受けられないということが書いてあります。
法定相続人とは、民法の規定によって相続人となる人のことです(法定相続人について詳しくは「法定相続人の範囲と順位や法定相続分について図でわかりやすく説明!」参照)。
未成年者控除額の計算方法
未成年者控除の額は、その未成年者が満20歳になるまでの年数1年につき10万円で計算した額です。
また、年数の計算に当たり、1年未満の期間があるときは切り上げて1年として計算します。
例えば、未成年者の年齢が15歳9か月の場合は、9か月を切り捨て15歳で計算します。この場合、20歳までの年数は5年になります。したがって、未成年者控除額は、10万円×5年で50万円となります。
なお、未成年者控除額が、その未成年者本人の相続税額より大きいため控除額の全額が引き切れないことがあります。この場合は、その引き切れない部分の金額をその未成年者の扶養義務者の相続税額から差し引きます。
扶養義務者とは、配偶者、直系血族(父母、子、祖父母、孫など)及び兄弟姉妹のほか、3親等内の親族(おじ・おば、甥姪など)のうち一定の者(家庭裁判所が扶養義務者と定めた者)をいいます。
また、その未成年者が今回の相続以前にも未成年者控除を受けているときは、控除額が制限されることがあります。
前回、控除額全額の控除を受けている場合は、2回目の控除は受けられません。
最初に相続又は遺贈により財産を取得した際に、控除額に余剰が生じた場合は、今回の控除額と前回の余剰分のいずれか少ない方の額の控除を受けることができます。
その未成年者が、最初に相続又は遺贈により財産を取得した際に、未成年者の税額控除を受けることができる金額が限度となります。
未成年者控除の申告方法
相続税の未成年者控除を受けることによって、相続税額の全額が控除される場合は、相続税の申告も、未成年者控除を受ける旨の申告も不要です。ただし、遺産額等の計算については、法的な見解が必要となる場合もありますので、税理士等専門家への相談を行った方が安心です。
控除額を差し引いても税額が残る場合は、相続税の申告が必要です。
相続税の申告については「相続税の申告が不要なケース、自分で申告する方法と申告期限」をご参照ください。
未成年者控除を受ける場合は、相続税の申告の際に、相続税申告書の第6表(「未成年者控除額・障害者控除額の計算書」)に必要事項を記入して、提出します。
未成年者控除を受けられたにもかかわらず、受けずに申告・納付してしまった場合は、申告期限から5年以内であれば、「更正の請求」という手続きをとることによって、払い過ぎた相続税を取り戻すことができます。
更正の請求の手続き方法が分からない場合は、相続税に強い税理士に相談するとよいでしょう。
まとめ
以上、相続税の未成年者控除について説明しました。
相続税には未成年者控除に限らず様々な税額軽減制度があるので、税理士に相談して、適用漏れのないようにしましょう。税理士をお探しの方はお気軽にご連絡ください。
ご希望の地域の専門家を探す
ご相談される方のお住いの地域、遠く離れたご実家の近くなど、ご希望に応じてお選びください。
この記事を書いた人

相続専門のポータルサイト「いい相続」は、相続でお悩みの方に、全国の税理士・行政書士・司法書士・弁護士など相続に強い、経験豊富な専門家をお引き合わせするサービスです。
「遺産相続ガイド」では、遺産分割や相続手続に関する役立つ情報を「いい相続」編集スタッフがお届けしています。また「いい相続」では、相続に関連する有資格者の皆様に、監修のご協力をいただいています。
▶ いい相続とは
▶ 監修者紹介 | いい相続
相続税に関する他の記事
-
現預金のみの遺産が一番損⁉相続財産ケース別チェックポイント
-
農地の相続税には、納税猶予特例の 活用がおすすめ!
-
相続税の修正申告が必要なケースとペナルティー、加算税と延滞税
-
多すぎる弔慰金は相続税の課税対象となることも!?知っておきたい弔慰金と死亡退職金のこと
-
相続税の計算で相続財産から控除できる葬式費用とは?
-
2月23日は税理士記念日|記念日の由来と相続相談するときの注意点
-
相続税還付|納め過ぎた税金が戻ってくる?還付請求のポイントと手続きの流れ
-
相続税は電子申告が可能に!e-Taxで提出する際の注意点とは?
-
相続税の障害者控除の税額控除に必要な適用要件と控除額算出方法
-
相続税対策を税理士に依頼するケースと依頼内容|税理士の選び方や相場は?