相続税の無申告加算税の税率と計算方法、延滞税についても説明
相続税がかかるケースであるにもかかわらず法定申告期限内に申告をしなかった場合は、期限後申告又は相続税額の決定によって、無申告加算税が課せられます。
この記事では、無申告加算税の税率と計算方法、それから、併せてかかることの多い延滞税についても説明します。
目次
無申告加算税とは?
無申告加算税とは、相続税等の国税がかかるケースであるにもかかわらず、その法定申告期限内に申告をしなかった場合に、期限後申告又は相続税額の決定によって、課せられる加算税です。
「決定」とは、無申告の場合に、税務署が調査して税額を決定する処分です。税務調査で、申告漏れが明らかになると、期限後申告を促されますが、これに従わない場合は、「決定」の処分が下ることになります。
相続税がかからない場合は無申告加算税がかからない
相続税は、被相続人(亡くなった人)から相続、遺贈(遺言によって財産を取得させること)や相続時精算課税に係る贈与によって財産を取得した各人の課税価格の合計額が、遺産に係る基礎控除額を超える部分についてかかります。
したがって、課税価格の合計額が、遺産に係る基礎控除額以下である場合には、相続税がかからず、相続税の申告をする必要はありません(ただし、小規模宅地等の特例や特定計画山林の特例などを適用することにより課税価格の合計額が遺産に係る基礎控除額以下となる場合には、相続税の申告をする必要がありますので、ご注意ください。)。
「遺産に係る基礎控除額」は、「3,000万円+(600万円×法定相続人の数)」の算式で計算します。
課税価格の求め方については「相続税の課税価格とは?計算方法をわかりやすく丁寧に説明!」をご参照ください。
相続税申告の要否を簡易的に判定するには、「申告要否の簡易判定シート」又は「相続税の申告要否判定コーナー」を利用するとよいでしょう。
前者は申告要否を簡易的に判定するためのもので、後者は申告要否の判定に加えて税額の概算についても簡易的に計算できます(あくまで概算であり、正確に計算するためには相続税の申告書に基づいて計算する必要があります)。
また、課税価格の合計額が基礎控除額を超える場合であっても、未成年者控除、障害者控除及び相次相続控除の適用を受けることによって納付すべき税額が無くなる場合は、申告不要です。
そして、相続放棄や遺産分割の結果、財産を取得しなかった人も申告不要です。
相続税の法定申告期限
相続税の法定申告期限は、「その相続の開始があったことを知った日の翌日から10か月以内」です。
相続は死亡によって開始します。
つまり、「その相続の開始があったことを知った日」とは、「被相続人(死亡して財産を残す人)の死亡を知った日」のことです。
なお、「被相続人の死亡を知った日」は、「社会通念上死亡を知り得た日」と解釈されているので、基本的には、死亡日ということになります。
要するに、通常は、「被相続人の死亡日の翌日から10か月以内」が相続税の法定納期限ということです。
例えば、亡くなったのが1月1日だとすると、11月1日が法定納期限です。
なお、申告期限の日が日曜日・祝日などの休日又は土曜日に当たるときは、これらの日の翌日が相続税の申告期限となります。
期限後1か月以内に自主的に申告すれば無申告加算税はかからない
無申告の場合でも、期限後申告を、法定申告期限から1か月以内に自主的に行った場合は、無申告加算税は課されません。
無申告加算税の税率は申告のタイミングによって異なる
相続税がかかるケースであるにもかかわらず、期限から1か月を過ぎても期限後申告をしない場合は、無申告加算税がかかります。
無申告加算税の税率は、申告のタイミングによって異なります。
税務調査の事前通知前が最も税率が低く5%、税務調査の事前通知後から税務調査前の期間が、50万円までは10%、50万円を超える部分は15%、税務調査後が50万円までは15%、50万円を超える部分は20%です。
詳しく説明します。
国税庁は、国民一人一人の資産状況についてある程度把握していますし、役所に死亡届を提出すると税務署にも連絡が行くので、税務署は「この相続人は無申告だが亡くなった人の資産状況からして相続税がかかるのではないか?」という当たりをつけることができ、疑いがある場合は、税務調査をして確認します。
税務調査をする際は、まず、調査日の日程調整のための事前連絡があります。
この事前連絡が入る前に期限後申告をした場合の税率は最も低い5%で済みます。
事前連絡から調査までは、最低でも1週間以上はありますから、この期間に期限後申告することもできます。
その場合は、税率が次に低く、納付すべき税額に対して、50万円までは10%、50万円を超える部分は15%となります。
納付すべき税額というのは、期限後申告で申告した相続税額のことです。
例えば、相続税額が200万円の場合の無申告加算税は、「50万円×10%+(200万円−50万円)×15%=27万5千円」となります。
税務調査後に期限後申告をした場合が、最も税率が高く、50万円までは15%、50万円を超える部分は20%です。
相続税額が200万円の場合の無申告加算税は、「50万円×15%+(200万円−50万円)×20%=37万5千円」となります。
税務調査の時期
参考までに、税務調査のおよその時期についてお伝えします。
相続税の税務調査の対象となった場合、通常、申告の翌年か翌々年の8月〜11月に税務署から連絡がきて、9月〜12月に実施されます。
前述のとおり、期限後申告をする場合は、税務調査の事前連絡前に済ませると、無申告加算税の税率が低く済むので、申告の必要があった可能性がある場合は、税務調査の時期までに、相続税に強い税理士に相談する等して、再確認することをお勧めします。
なお、税務調査について詳しくは「相続税の税務調査の実態と対策〜何年後?通帳やタンス預金も対象?」をご参照ください。
無申告加算税のほかに延滞税がかかる
法定納期限(=法定申告期限)までに、税金を納付しなかった場合は、延滞税がかかります。
無申告加算税が課せられるケースでは、通常、延滞税も併せて課せられることになります。
延滞税については「相続税の延滞税がかかる場合と免除される場合、計算方法」をご参照ください。
財産を隠蔽・仮装した場合は重加算税が課される
財産を隠蔽又は仮装していた場合は、無申告加算税に代えて、より税率の高い重加算税が課されることなります。
重加算税について詳しくは「相続税の重加算税の要件・税率・計算方法、配偶者控除の適用可否」をご参照ください。
まとめ
以上、相続税の無申告加算税について説明しました。
無申告加算税や延滞税がかかると、余計に税金をとられることになるので、期限内に申告要否の判断をして、必要に応じて申告を済ませるようにしましょう。
自分で申告しようとすると、期限に間に合わなくなってしまったり、申告要否の判断を誤ってしまうリスクもあるので、相続税に強い税理士に依頼することをお勧めします。税理士をお探しの方はお気軽にご連絡ください。
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