会社の運営を健全化するには「会社にお金を残す」ことが必要になります。お金を残すには「売り上げを上げる・資産運用をする・経費の節約をする」などが有効です。しかし、それよりも効果が確実に出る手段があります。それは節税、特に創業期であれば「消費税免税制度」を上手く使うことが鍵になるのです。
今回は、「消費税免税」を使った節税対策についてまとめてみました。消費税はこの先も税率が上がっていくことが予想されます。使える制度は正しく使って、会社にお金を残すようにしましょう。
消費税が免税される条件|ルールを理解しきちんと節税
「消費税では、その課税期間の基準期間(※)における課税売上高が1,000万円以下の事業者は、納税の義務が免除されます」(国税庁HP納税義務の免除より)
※基準期間→法人の場合、原則として前々事業年度のことを指します
簡単に言うと、消費税を除いた課税売上高が、「1000万円以下」である場合は、その事業者は「免税事業者」となり、消費税の納税が免除されるということです。免税事業者になるには、他にどんな条件があるのか、きちんと把握しておきましょう。
設立1期目の法人が免税事業者になるための条件とは!?
新たに設立した法人については、原則として免税事業者となることが認められています。ただし、設立1期目の開始日の資本金額が「1000万円未満」であることが条件になるので注意が必要です。
設立2期目の法人が免税事業者になるための条件とは!?
設立2期目も1期目と同じように、資本金額が「1000万円未満」であれば、免税事業者と認められます。しかし、特定期間である「設立1期目が開始された日から6か月の期間」、課税売上高もしくは給与支払額の合計額のどちらかが1000万円以下であること、が条件です。
設立3期目以降の法人が免税事業者になるための条件とは!?
設立3期目以降の法人の場合、資本金額に関係なく「前々事業年度(基準期間)である設立1期目」の税抜課税売上が1000万円以下であることが、免税事業者の条件です。
ただし、設立2期目開始日以後の6か月の期間(特定期間)の課税売上高・給与支払額の合計額のいずれかが1000万円以下である必要があります。
この条件は、4期目以降の同様です。つまり「基準期間の課税売上高が1000万円以下で、特定期間の売上高・給与支払額の合計のいずれかが1000万円以下である」ことが、設立4期目以降の法人が免税事業者になる条件になります。
消費税免税を上手く使って、ルールに基づいた節税をする方法
「消費税免税」の基本的な条件を理解したところで、具体的な節税対策の方法を把握しておきましょう。条件やルールをきちんと理解し運用しなければ、「追徴」という最悪の事態も招きかねません。設立期ごとに応じた対策を講じていく必要があるのです。
設立1期目が開始するまでに|これだけは確認しておこう
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●設立1期目の開始日の資本金額が「1000万円未満」になるように払込金額を調整。
例)会社設立にあたり1000万円の払い込みがある→500万円を資本金、残りの500万円を資本準備金とすれば、「設立1期目免税事業者」の条件が満たされます。
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●法人の設立1期目を「7ヶ月以下」になるように調整することで、特定期間そのものを無くしてしまう。
解説:設立2期目では、「前事業年度が7ヶ月以下になった場合には、例外的に特定期間が無いもの」と見なされます。特定期間が無くなってしまえば、売上や給与の合計をチェックされることが無くなるということです。
つまり、設立1期目の課税売上・給与支払額の合計がどちらも1000万円を超えてしまいそうな場合、「法人設立1期目が7ヶ月以下になるように」事業年度を調整し、設立2期目に免税事業者になることが出来るように備えることが重要になります。
設立2期目が開始する前に確認しておくこと
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●設立2期目の開始日の時点で、資本金額が「1000万円未満」になるように調整
例)払い込み金額を調整や、敢えて「減資」実施し資本金額を減らすことで、設立2期目開始日の資本金額が1000万円以下することが可能になります。
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●特定期間の給与支払期日を遅らせる
解説:資本金額が1000万円以下であっても、課税売上高・給与支払額の合計の両方が1000万円を超えてしまえば、免税事業者になることは出来ません。
そのため、「給与の支払い期日を下半期に遅らせること」で給与支払額の合計を減らす対策が可能であるならば、有効な免税対策となります。
設立3期目以降に可能な対策も知っておこう!
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●基準期間の課税売上高を1000万円以下に抑える努力をする
例)建設業の場合、工事進行基準から工事完成基準に消費税法上の収益確認基準を変更することで、「売上計上時期を遅らせ」基準期間の課税売上高を1000万円以下に抑えられます。
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●給与支払いに関する事業を外注費として変更できるように切り替える
解説:特定期間の給与支払い日を遅らせることが出来ない場合もあるはずです。その場合には、「給与発生している事業を、敢えて外注に切り替える」ことで、給与の支払い額そのものを減らすことも一つの対策として考えられます。簡単に言えば、自社で行っている事業を敢えて外注に回し、社内の人員が掛からないようにすることで、結果的に給与の支払い額を減額するということです。
まとめ|免税になる条件を理解し設立計画段階から対策をとろう!
どうでしたか。消費税が免除される「免税事業者」になるための対策方法が分かったでしょうか。節税対策は奥が深く、多額の設備投資をする場合は、敢えて消費税課税事業者になる方がいい場合もあります。つまり、会社設立の計画段階から対策を練っていくことが重要なのです。専門家に相談しながら、事業計画をきちんと立てて会社を設立しましょう。
- 今回のポイント
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- 消費税「免税事業者」になるための基本条件は、課税売上高が「1000万円以内」である必要がある
- 設立1・2期目の開始時点で、「資本金額を1000万円以内」に抑えるように調整しなくてはいけない
- 設立2・3期目の特定期間の課税売上額・給与支払額の合計のどちらかが「1000万円以内」にならなくてはいけない
- 会社設立前に1期目の売上と給与の試算し、双方が1000万円を超えそうであるなら、設立1期目が7ヶ月以下になるように事業年度を調整し、特定期間そのものを無くすことができる
- 設立2期目以降の会社の場合、特定期間の課税売上高と給与金額を抑える対策をとる工夫が必要
- 収益の確認基準を見直し、売上計上時期を遅らせ、基準期間の課税売上高を抑えることが可能
- 給与金額を抑えるために、支払期日を遅らせること・敢えて外注を行うといった対策が可能
- 多額の設備投資をする場合は、課税事業者になる方が良い場合もある
- 会社設立前に専門家に相談しながら、計画的に対策を講じることが重要
(編集:創業手帳編集部)