近年はWEBビジネスが多様化したこともあり、様々なビジネスチャンスが世に溢れています。またレンタルオフィスやシェアオフィスオフィスなどが発達してきたことなどの理由から、起業する際の初期費用を最小化することが可能になりました。一般的な普通のサラリーマンでも比較的容易に開業できるのです。
ただ、サラリーマン時代には会社が責任を負ってくれていた、源泉徴収や年末調整などの「税金」 の処理は自分で行わなくてはいけません。もちろん経理担当や税理士にお願いも出来ます。しかし最終的な責任は「代表であるあなた」が負う必要があるのです。
そこで今回は、サラリーマン起業家が創業時に見落としがちな節税ポイントをまとめてみました。参考にしてください。
「事業所得」をきちんと理解する
節税を考えていく際に重要になってくる1番のポイントは「所得とはどのようにして計算されるのか」にあります。個人事業主の場合は経理も自分で行うことが多いため、多忙さから「経費の計上」がおろそかになってしまいます。まずは「事業所得」とは何かをきちんと考えてみましょう。
所得とは 「収益-経費」である
個人事業として起業した場合、当然のごとく事業で得た「事業所得」が所得税の課税対象になってきます。ただし、この「事業所得」とは「収益」ではありません。所得とはいわゆる儲けのことになるので「収益-実際にかかった経費」という式が成り立ちます。
前述したように所得税は事業所得に税率をかけて計算します。そのため細かに経費を計上していき事業所得の値を小さくしていくことが 、節税の第一歩になってくるのです。
個人事業で起業した場合頭では理解していても、途中で面倒になってしまったという話をよく聞きます。1枚の領収書の金額は小さくとも、1年分積み重なれば、大きな額まで膨れあがるのです。プライベートな支出を経費として計上してはいけませんが、事業として使った経費は全て計上するように心がけてください。
「所得控除」をきちんと理解する
所得控除とは、所得から一定額を差し引くことができる制度です。サラリーマンでも「配偶者控除」「生命保険控除」「医療費控除」という所得控除があるので、ご存知の方も多いでしょう。個人事業主にもこの3つの控除が適応されますので、忘れずに申請することが重要になってきます。しかし、個人事業主の場合さらに重要になってくる所得控除があるのです。
青色申告特別控除
「取引を複式簿記で記帳すること」などの一定の条件を満たすことで、「最大65万円」の控除を受けることが可能になります。現在は白色申告でも記帳義務があるので、青色申告しても手間はそれほど変わりません。それなのに圧倒的に大きな節税をすることできるのです。
青色申告に対応した会計ソフトもたくさんあります。記帳に不安がある人も、以前に比べれば簡単に作業できるようになりました。最初は大変かもしれませんが、チャレンジするだけの価値はあるのではないでしょうか。また青色申告を選んだ場合は、税務署にその旨を届け出する必要があります。忘れないようにしてください。
専従者控除
本来は「生計を一とする親族」へ支払う給与については経費として計上することができません。
しかし個人事業主の場合、専従者が「生計を1つにして暮らす親族(配偶者・祖父母・親・子供)である」「その年の12月31日現在で15歳以上である」「年間に6か月以上事業に従事している」と言う条件と、その他の条件や一定の手続きを行うことで控除の対象とすることが可能です。
控除の内容は下記になります。
B.事業所得を専従者で割った金額
→AとBで比較し低い方の金額を控除することができます。
青色申告:届出書に給与額を記載して提出することで、支払い分を経費として計上することが可能です。
※ただし、届出書に記載する額が控除申請の最高額になります。
小規模企業共済などの掛金控除
小規模企業共済とは「個人事業者のための退職金制度」のようなものです。役員を退職したり廃業したりした時のために、あらかじめ積み立てしておく制度になります。
小規模共済金の掛け金は全て所得から控除することができます。他にも対象になる掛け金制度(確定拠出年金・心身障害者扶養共済制度など)があるので、確認しておきましょう。
開業準備期間中の支出を「開業費」として計上する
開業前はバタバタしてしまい、どうしても失念してしまう経費が「開業費」です。開業費は文字通り開業の準備のために支払った支出のことになります。開業費は、開業の時点で一度繰り越し資産としてプールしておき、あとで経費として計上することが可能です。
経費計上する方法には「5年間の月額償却」と「任意償却」の2つから選択することが出来ます。多くの事業者は任意償却を選び、赤字解消し利益が出た年度で開業費を償却するかたちをとっているようです。
「法人なり」も知っておこう!
サラリーマン時代の顧客のほとんどを引き継ぐことが可能で、早期に大きな収益をあげられる場合には「法人なり」をするという選択もあります。所得控除後の課税対象になる所得が一定額を超えた場合は、「法人なり」と言って個人事業から会社組織にした方がいいようです。
「法人なり」した方がいい課税所得額は事業形態によって異なります。幅としては500万から900万とも言われていますが、この辺は専門家に相談してみた方がいいかもしれません。会社にすることで、経費計上の幅が大きく広がります。また、対外的な信用も格段にアップすることも大きなメリットです。
しかし、会社設立には「登記申請」や「定款認証」などの面倒な手続きが必要になります。また、従業員の社会保険の負担などの支出も考えにいれなくてはいけません。詳しい知識がない人が「法人なり」する場合は、やはり専門家に一度相談した方がいいようです。
まとめ|知っているつもりが一番怖い|もう一度見直そう
いかがでしたでしょうか。今回は個人事業主として起業する場合の「節税の基本」について解説しました。知っている内容もあったかもしれませんが、見落としていた部分もあったのではないでしょうか。
節税は小さなことをコツコツ積み重ねていくことが非常に重要になります。創業時の忙しい時期こそ、節税が事業成功の大きな力になってくれる場合が多いのです。今まで軽く考えていた方は、もう一度見直してみてください。見直してもわからない場合は、専門家に相談してみてください。
- 今回のポイント
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- 面倒でも「領収書」は全て保管し一枚一枚きちんと経費に計上(私生活の支出はNG)
- 起業するなら白色でなく「青色申告」
- 家族も一緒に事業に関わる場合は「専従者控除」を忘れずに
- 小規模企業共済などは、掛け金のすべてを所得から控除することが可能
- 開業準備費は「開業費」として経費に計上することが可能
- 大きな収益が得られる場合は「法人なり」も検討する
(編集:創業手帳編集部)