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個人事業主の節税対策虎の巻!経費と控除を見なおそう

個人事業主(自営業者)になると、自分で確定申告をする必要があります。確定申告で所得を確定させ、それに基づき所得税、住民税などの納税額が決定します。

少しでも税金の負担を抑えるため、重要になってくるのが「節税対策」。あなたはなにか取り組んでいますか?知っていると知らないのでは、トータルの納税額に大きな差が生じます。

今回は、今すぐ着手できる節税対策を全てご紹介します。

個人事業主の「節税」とは

個人事業主の治める税金は4種類

まず、個人事業主にかかる税金について理解しておきましょう。主に課せられるのは、「所得税」「住民税」「事業税」「消費税」の4つです。それぞれの特徴は以下のとおり。

所得税 個人の所得(収入から必要経費を差し引いた利益=事業利益)に対して、国に納める税金。
住民税 居住自治体に納める税金。前年の所得金額に応じて課税される「所得割」と、所得にかかわらず定額の「均等割」を合算して算出される。
事業税 事業で得た所得について、都道府県に納める税金。290万円の控除額があるので、事業所得が290万円以下の場合は負担がない。
消費税 顧客から受け取った消費税を納税する。課税対象となるのは、2年前の売上高が1000万円を超えた時。

このうち「事業税」「消費税」は、事業規模に応じて課される場合と課されない場合があります。

節税のカギとなるのは「所得」

所得税も住民税も、個人事業主だけでなく全ての人にかかる税金です。ただ、個人事業主がふつうの給与所得者と違うのは、「自分で申告して所得を決める」という点。

サラリーマン等の給与所得者は、所得は自動的に決定してしまいますが、個人事業主の場合は自分で申告して所得を決定します。

この所得額に応じて、各種税額が課されるのです。つまり、個人事業主の節税対策とは、「いかに所得額を低くおさえるか」という点に集約されます。

所得の計算方法

節税のために考えるポイントが分かったところで、「所得」の計算方法を確認しておきましょう。

所得=売上高ではありません。そこから、必要経費や控除額を除く必要があります。所得は、以下の計算式で表されます。

  • 収入(売上高)-必要経費=事業利益 …※事業税の課税判断はここで行う
  • 事業利益-所得控除額=所得額

所得や所得税の計算方法については、こちらのページでも詳しく解説しています。

「経費」「所得控除」で税金は決まる

上の式を見てもらうと分かる通り、所得を減らすためには「必要経費」「所得控除額」を増やすことが有効です。いくら税金を抑えたくても、収入を減らすのは本末転倒ですから。収入は増やしつつ、その他の部分で節税できないか考えましょう。

そして、 工夫次第で「必要経費」「所得控除額」を増やすことができるのが、個人事業主のメリットなのです。頭の使いドコロです。

青色申告を選ぼう

また、個人事業主が確定申告する上で意識しておきたいのは、申告方法。確定申告には「白色申告」と「青色申告」の2種類があるのですが、節税としておすすめなのは青色申告です。

というのも、青色申告を行うと、10万円か65万円の控除を得られるからです。住民税の所得割部分は、課税所得の10%。青色申告を選択するだけで、住民税だけで最大65,000円の節税となるのです。

その他にもメリットの多い青色申告。選ばない理由はありません。青色申告のメリットや開始方法については、後述します。

ここで紹介する節税対策

「節税」の仕組みはわかっていただけましたか。この記事では、以下の流れで節税対策をご紹介します。

  • 「青色申告」で節税する
  • 「経費」を計上して節税する
  • 「所得控除」を増やして節税する
  • 「こまめに記帳」して節税する
  • 利益が大きくなったら「法人成り」を検討する

今日から、できることから取り入れてください。来年の確定申告で、大きな威力を発揮するはずです。

サラリーマンの方が個人事業主として起業する際の節税裏ワザについても解説していますから、合わせてどうぞ。

青色申告で節税

「青色申告」とは、毎日の取引を帳簿で記録し、それにもとづいて所得を申告する制度です。税務署に申請を行い、承認を受けることで始めることができます。

「青色申告」で申告をしない場合は、「白色申告」となります。

青色申告と白色申告の違い

「青色申告」と「白色申告」の違いを簡単に比較してみましょう。現金主義会計の場合など、手間を減らすためにあえて白色申告を選択している事業者もいました。しかし、2014年からは、全ての白色申告者に「帳簿への記帳」と「帳簿の保存」が義務付けられたため、白色申告と青色申告の手間はあまり変わらなくなっています。

青色申告 白色申告
事前届出 必要 不要
記帳 必要(複式簿記 / 単式簿記) 必要(単式簿記)
確定申告時の

提出書類

確定申告書B

所得税青色申告決算書

確定申告書B

収支内訳書

節税効果 最大65万円の控除のほか、

複数のメリットがあり(※後述)

とくに無し

確定申告の際に作る書類が異なりますが、日々の作業ではあまり差がありません。にも関わらず、青色申告で個人事業主が受ける節税メリットは非常に大きいのです。

青色申告のメリット

「青色申告」を選択すると、次のメリットがあります。

最大65万円の控除「青色申告特別控除」

青色申告最大の節税効果があるのが、特別控除。計算した所得から、さらに10万円または65万円の特別控除が受けられるのです。

控除額の違いは、簿記方式の違いです。簡易簿記(単式簿記)の場合の控除が10万円、複式簿記の場合の控除が65万円です。

複式簿記は難しいから、白色申告で良いや…と諦めている人は、せめて単式簿記で10万円控除が受けられる青色申告を選択することをおすすめします。事業が拡大して、経理部分の担当者を雇えたり、税理士に依頼できる余裕ができたりという場合は、その時改めて複式簿記への挑戦を検討してみてください。65万円分の控除は、非常に大きいですよ。

家族への給与を無制限に経費にできる「青色専従者給与」

原則として、家族に払う給料は費用となりません。しかし、青色申告を選択していると、配偶者などの家族への給料を経費(青色専従者給与)として計上できます(税務署への届出が必要です)。

白色申告の場合も「専従者控除」はありますが、その場合の上限は86万円。しかし、青色専従者給与には上限が定められていません。

ただ、無条件ではなく、「業務に見合った給料である」「もっぱらその業務についている」という条件があります。専業主婦の奥さんに、業務の一部を依頼している場合などは、青色申告のほうが節税につながります。 目安としては、「1日6時間以上、月に15日以上ないしは、年間で6か月以上相当」の期間働くことが条件です。

債権の一部を損失計上できる「貸倒引当金」

青色申告にすると、年末における貸金の一部を損失として計上できます。この仕組みを「貸倒引当金」と言い、売掛金や貸付金などの債権が回収できないと思われる場合に、回収不能見込額をあらかじめ損金として計上します。

売上が上昇している場合ほど、節税効果が高くなります。

30万円未満の資産を全額経費にできる「少額減価償却資産の特例」

通常、1年以上利用する備品は、使用できる年数に合わせて費用を計上する「減価償却」を行う必要があります。車、パソコン、カメラなどを購入しても、その額が10万円を超えると、全額を経費にすることができないのです。

しかし、青色申告を選択すると、特例により30万円未満の物品購入であれば、全額費用にすることができます。単年度に計上できる費用額が大きくなるので、それだけ節税効果を早く実感することができます。

ただし、この特例の合計は年間300万円まで。「節税になるから」と何でもかんでも購入できるわけではありませんから、総額に注意しながらこの特例の恩恵に預かりましょう。

青色申告を始める方法

青色申告を始めるためには、開業後2か月以内に税務署へ行き、「所得税の青色申告承認申請書」を提出する必要があります

白色申告から青色申告に切り替える場合は、青色申告をしたい年の3月15日までに、「所得税の青色申告承認申請書」を提出することで翌年の申請から青色申告が可能になります。確定申告のタイミングで申請する人が多いです。

「青色申告」と聞くと、難しそう…と思われるかもしれませんが、経理の知識がなくても大丈夫。初心者でも青色申告・記帳ができるように作られた会計ソフトを使ったり、入力をサポートしてくれる税理士さんに依頼したりすることで、安価で対応できます。青色申告で得られる節税効果を考えると、非常に費用対効果が良いです。まだ青色申告を導入していない方は、この機会に導入を検討してください。

なお、青色申告のメリットや節税効果については、こちらの記事でもご紹介しています。合わせて参考にしてくださいね。

経費を計上して節税

ここからは、「経費」の内容を見なおして節税効果を高める方法についてご紹介します。

家事按分を使って家賃や光熱費、通信費等を経費化

個人事業主であれば、自宅を作業場にしていたり、自家用車で仕事をしていたり、プライベートと仕事用で同じ携帯電話・パソコンを利用していたり・・・と「仕事とプライベートの境目があいまい」という状況ではないでしょうか。

プライベートで利用するものでも、少しでも事業で利用しているものであれば、料金の一部を費用として計上できます。これを「家事按分」と言います。端的に言うと、「生活費の一部を経費にする」方法です。

家事按分として計上できるものの例

家事按分として計上できる生活費には、以下の様なものがあります。少しでも事業として使っているものがあれば、対象となります。

  • 家賃
  • 水光熱費(電気代、水道代、ガス代)
  • 通信費(電話代、携帯電話料金、インターネット料金 等)
  • 車両費(ガソリン代、車検代、自動車購入費、駐車場台、自動車税 等)
  • パソコン購入費
  • 事務用品(プリンターのインク代、文房具費 等)

いずれも全額ではなく、事業に使った割合で按分し、費用計上を行います。

家事按分の計算方法

「按分」と言うとおり、上記すべてを全額経費にできるわけではありません。事業で使った割合を定めて、客観的に見ても適正と思われるような基準で算出し、計上する必要があります

この基準に明確な指標はなく、すべて個人事業主が自由に設定できるのが特徴です。その費用全体のうち、どのくらいが売上に貢献したのか。他人に尋ねられた時、堂々と答えられるように一定の基準を考えておきましょう。

[按分比率の考え方例]

  • 作業スペースの面積比率で決める(家賃)
  • 走行距離で決める(自動車関連費)
  • 利用時間で決める(インターネット、電気代、水道代、家賃など 1日8時間の業務であれば、30%を計上するなど)
  • コンセントの数で決める(電気代)
  • 利用量で決める(テザリングしている際の通信費など)

実態にあった合理的な按分基準であれば、税務署から指摘が入る可能性は低いです。ただ、少しでも節税に…とあらゆるものを経費にしてしまうと、税務署から厳しく調査されることも。そうなると、追加課税が行われる場合もあります。くれぐれも注意して、常識の範囲内で家事按分を行いましょう。

30万円未満の備品を購入する

事業に使うものであれば、その取得費用がそのまま経費となります。青色申告の項で述べたとおり、青色申告の申請をしていれば、1件につき30万円未満を経費として計上できます(年間300万円の上限あり)。青色申告でない場合でも、1件につき10万円未満は全額経費計上可能です。

必要な買い物は年内に

そもそも、確定申告は1月~12月に生じた売上や経費して、翌年の3月15日までに申告するもの。大きい買物をするのであれば、年内に購入することでその年の経費を削減することができます。

ですので、買い替えや購入を考えている場合は、年内に決断することをおすすめします。

節税のための物品購入にオススメなもの

購入費用が大きい物ほど、その分節税効果も上がります。ですので、下記のような什器がおすすめです。

  • 事務机・椅子
  • 自動車
  • パソコン
  • カメラ
  • プリンター
  • 携帯電話

売上が多く、税金が増えそうな年には積極的に買い替えを検討してもよいかもしれません。その分可処分所得は減りますが、税金で支払うよりはお得でしょう。一部をプライベートでも使う場合は、必要に応じて家事按分することをお忘れなく。

「交際費」を味方につける

経費の中で、「交際費」は節税の観点から忘れてはならないポイントです。最も使い勝手が良い経費とも言えます。

「交際費」とは、税法上「得意先や仕入先、または事業に関係のある人たちに対しての接待や慰安、供養や贈答などに支出する費用」となっています。つまり、仕事相手との食事や贈り物は、全て経費として計上できるのです。

交際費については、こちらのページでも詳しく解説していますので、合わせて参考にしてください。

個人事業主の交際費は上限がない

税法上、交際費は経費として計上できます。

ただ、法人の場合は計上できる交際費に上限が定められています。しかし、個人事業主の交際費には上限がないのです。

比較すると、次のとおりです。

  • 個人事業主…限度額なし
  • 資本金1億円以下の法人…年間800万円まで経費計上可能
  • 資本金1億円を超える法人…全額経費計上不可

個人事業主にとっては、非常に有利な経費ですよね。とはいえ、計上したもの全てが交際費として認められるかは別の話。

認められる交際費の例

交際費として計上できる支出の例を見てみましょう。ポイントは、「事業に関係する人たちへの費用かどうか」という点です。

  • 得意先との会食
  • クライアントとの打ち合わせの飲食費
  • 取引先へのお中元お歳暮
  • 得意先への慶弔費
  • 飲食の際に利用したタクシー送迎代
  • 得意先とのゴルフ

いずれの場合も「誰と行ったか」が重要となります。領収書に相手の名前を控えるなど、いざというときに証明するための準備をしておきましょう。

一方、プライベートの旅行や食事は交際費として認められません。あくまで事業との関連性を忘れずに!

交際費が増え過ぎたら

非常に便利な「交際費」ですが、あまりに集中し過ぎると税務署からチェックされてしまう場合もあります。その場合、「会議費」という科目が使えます。一人あたり5,000円以上の飲食費であれば、打ち合わせの際の代金を会議費として計上できます。

交際費と同じく、割り勘の場合も支払った額が対象となります。

取引先やクライアントとの打ち合わせを飲食店で行う場合、しっかり領収書を貰うようにしましょう。この場合も、しっかり事業のための打ち合わせということが分かるように、領収書やレシートに相手の名前や打ち合わせ内容をメモしておくことをおすすめします。

中小企業倒産防止共済(経営セーフティ共済)を活用する

将来に備えて積み立てながら、全額を経費として計上できる夢のような制度もあります。

「中小企業倒産防止共済(経営セーフティ共済)」は、今は経営が安定していても、いつ取引が亡くなるか不安。資金繰りが悪くなった時のための備えをしておきたい…そんな個人事業主の悩みを解消してくれる制度です。「中小企業」という名称ですが、個人事業主も加入することができます。この制度、掛け金が全額経費として計上できるのです。

年間最大240万円の経費計上が可能

中小企業倒産防止共済の最大のメリットは、掛金を全額経費として計上できること。掛け金は月5,000円~200,000円で自由に設定でき(5,000円単位)、最大で年間240万円の経費計上ができます。積立上限は800万円。

控除ではなく、経費計上できるので、事業利益を減らすことができます。事業税が課されるか微妙なラインの人には、特にオススメの節税方法です。

「倒産防止」を目的とした共済制度ですから、10%の積立金と引きかえに、積立金額の最大10倍(8,000万円上限)を借り入れることができます。いざというときの資金調達先としても威力を発揮します。

元本割れのリスクが低い

中小企業倒産防止共済は、積立期間が40か月(3年4か月)を超えれば、元本割れすることがありません。その他の制度や個人年金等と比較しても、非常に運用リスクが低いのも特徴です。

また、解約時の払戻金は事業所得となりますが、使いみちに使途はありません。ですので、自分自身や従業員の退職金として積み立てておくのも良いかもしれませんね。

事業をはじめて1年経過したら、導入の検討を

ただ、この共済の加入には制限があり、1年以上経営していなければ申し込むことができません。ですので、事業開始から1年が経過したら導入を検討しましょう。年額を一括支払いすることも可能ですから、年末の節税対策としても有効です。

中小企業倒産防止共済のメリットについては、こちらのページでも詳しく解説しています。合わせてどうぞ。

これは経費になる?ならない?

では、個人事業主が経費として計上できるものには何があるのでしょうか。逆に、経費としては認められないものは、何があるのでしょうか。具体的な事例をまとめました。使えそうなものはないか?確認してください。

経費になるもの

  • カフェで作業した時のカフェ代

※ノマドワーカーなど。ただ、ランチなどの食事代は不可。

  • 有料アプリに課金してレビューを執筆した場合の課金額
  • 自宅兼事業所のウォーターサーバーやコーヒーメーカー代

※事業で使用している場合。必要に応じて按分。お客さんに提供している場合は「交際費」としても計上可能。

  • 事業用の印紙税、個人事業税
  • 業務に必要な資料代・本代・雑誌代
  • セミナー出席費用
  • 自宅兼事務所の引越し費用

※適切な割合で家事按分すること。

  • 荷造りに必要な資材代
  • 事務用品代
  • 宅急便・郵便代
  • 仕事先への年賀状代
  • 名刺代
  • パンフレット代
  • 事業用資金に関する銀行手数料

経費にならないもの

  • 家族旅行の宿泊費

※家族同伴が義務の場合は、認められる場合も。

  • 個人事業主の給料

※従業員分は可

  • 個人事業主の生命保険料

※経費にはならないが、一定額は生命保険料控除の対象となる。

  • 個人事業主の健康診断・人間ドック代

※法人と違い、健康診断費用は計上不可。個人的支出とみなされる。従業員分は可。

  • 個人事業主の税金(所得税、住民税、消費税、相続税、贈与税 等)

※事業用の印紙税、個人事業税は経費になる

  • スーツや靴の購入費

※私用もできるため。作業着など、事業専用のものなら経費可。

  • 交通違反等の罰金・反則金

※業務上で生じた駐車違反の場合は、レッカー代・駐車料金は経費可。

  • スポーツジムの会費

上記の例を見ても分かる通り、ポイントは「事業に関わると説明できるかどうか」です。少しでも事業に関連するものは経費計上が認められる可能性がありますから、領収書やレシートを保管しておくようにしましょう。

個人事業主が経費に計上するために必要なもの

経費として計上するためには、その証拠となる書類を保管しておく必要があります。そのために必要となるのが、

  • レシート
  • 領収書
  • クレジットカード明細書
  • (出金伝票) ※詳しくは後述

です。

店頭で購入した場合は、レシートや領収書を必ずもらい、保管する癖をつけましょう。宛名には、個人名か屋号を書いてもらうとより信頼性が増します。レシートがもらえた場合は、わざわざ領収書を発行して貰う必要はありません。「いつ、何を買ったか」が十分にわかるからです。

クレジットカード明細書も証拠として使うことができますが、「何を買ったのか」がわかりにくいので、個別の納品書なども合わせて保管しておくほうが良いでしょう。WEB明細の場合は、プリントアウトしてくださいね。

明細に品目が書かれていない場合や、打ち合わせの時の飲食代などは、「何を買ったか」「誰との打合せか」が分かるようにメモしておくことをおすすめします。後で振り返った時に迷うことがありませんし、もし第三者から質問されたとしても、すぐに答えることができます。

私用の出費と混ざっている場合

事業用の物品を購入した場合に、私用の買い物の会計も混ざっている・・・という場面は多々あると思います。そういった場合は、事業用に使った部分だけを経費計上します。保管しているレシートに、プライベートの支出が混じっていても問題ありません

マーカーで印をつけていると、どの部分が経費計上していて、どの部分は無関係の部分なのかが分かりやすくなります。これは、クレジットカード明細書の場合も同様です。経費として計上した部分が認識できるようにしておきましょう。

レシートがないものを経費計上する方法

ただ、レシートや領収書が手に入らない出費もありますよね。交通費や自動販売機での購入、取引先への慶弔費、レシートの紛失など。こういった場合も、経費計上することができます。その際に使うのが、「出金伝票」です。

出金伝票とは、何らかの理由で領収書やレシートが準備できない時の支払いを証明するためのもの。日付、支払先、金額、支払内容を具体的に記入します。帳簿には、出金伝票の内容に従って記入すればOKです。

電車やバスなどの交通費は、都度精算すると大変ですから、日付、経路、金額などを1ヶ月毎にまとめて記載する形を取ることもできます

ですので、個人事業主となったら、文房具屋さんで出金伝票を購入しましょう。もちろん、その購入代金も経費になりますよ!

ただ、あくまで「出金伝票」は最終手段。乱発すると、税務署に目をつけられる可能性があります。基本的にはレシートや領収書を保管するという姿勢を忘れないようにしましょう。

所得控除を増やして節税

ここまで、「青色申告」を選択して節税する方法、「経費」を計上して事業利益を減らす方法をお伝えしました。次は、「所得控除」について考えていきます。

もう一度、課税所得が決まる仕組みを思い出してみましょう。

  • 収入(売上高)-必要経費=事業利益
  • 事業利益-所得控除額=所得額

でしたね。つまり、所得控除額が増えれば増えるほど、課税所得は減り、税負担も軽くなります。所得控除とは、社会保険料、生命保険など、確定申告をする人だれでも受けられる控除。中には、個人事業主だからこそ受けられる控除もあります。

その分の支払い負担は発生しますが、節税になるだけでなく、未来のための投資・いざというときのリスクヘッジになるものばかり。売上が増えてきたら、以下に紹介する制度を利用して、上手に所得控除額を増やしてください。

小規模企業共済

通常の会社員と違って、個人事業主には「退職金」がありません。定年がなく、いつまでも働けるとはいえ、この差は大きいもの。しかし、「小規模企業共済」を使えば、自分で退職金を積み立てることができるのです。

個人事業主だけでなく、会社役員・経営者が対象となる制度で、事業を廃止・退職する際に、それまで積み立てた掛け金に応じて給付金を受け取ることができる制度です。「経営者の退職金」とも言われます。

20年以上積み立てていれば、掛け金の100%以上の給付が見込めるので、単に将来に向けて貯金するだけよりもお得です。さらに、既に積み立てた金額の範囲内で、無担保・無保証人で事業資金の貸付を受けられるというメリットもあります。

年間最大840,000円の控除になり、受け取りも節税対策に

小規模企業共済の掛け金は、全額所得控除の対象となります。掛け金は月1,000円から70,000円までの範囲(500円ごと)で自由に設定でき、最高額の場合は年額840,000円の所得控除に。

また、受け取りの際も節税効果があります。分割で受け取る場合は雑所得扱い、一括の場合も退職所得扱いとなり、受取方法でも所得控除が受けられます。

小規模企業共済制度のメリットについては、こちらのページでも詳しく解説しています。合わせて参考にしてください。

各種年金制度

個人事業主には厚生年金がないので、どうしても老後にもらえる年金額に不安が生じます。そこで、「個人型確定拠出年金」「国民年金基金」に加入すると、支払金額が全額所得控除になります。

節税対策をしながら、老後についての備えも増やしたい人にはおすすめです。

また、国民年金に関して未納分などがある場合は、そちらの追納を行いましょう。年内に支払った分は、全額所得控除可能です。

個人型確定拠出年金(個人型401K)

掛け金の上限は月68,000円(1,000円単位で設定可能)で、年間の所得控除額の上限は816,000円。

自分で運用先を選べる制度です。運用中の利益は非課税となり、運用次第では掛け金よりかなり多くの額を受け取ることができます。障害給付金、遺族給付金(死亡一時金)も受け取れるため、いざというときの備えにもなります。生命保険を増やすよりも、節税面でもお得かもしれません。

国民年金基金

国民年金に加入している個人事業主が、将来受け取る年金を増やすために加入できる公的な年金制度です。掛金は5,000円以上(1,000円単位で設定可能)で任意に設定でき、年間の所得控除額の上限は816,000円。

ただ、物価スライド制に対応していない(ので、インフレ時に貰える額の価値が下がる)、途中解約ができない…というデメリットがあります。

個人型確定拠出年金と国民年金基金の比較

似ている制度ですが、少々違う点もあるので比較してみましょう。

個人型確定拠出年金 国民年金基金
所得控除上限 両者を合算して月額68,000円まで。
付加年金との併用 可(併用の場合、月額上限は67,000円) 不可
保険料変更 年1回可能

0円にすることも可能

月1回可能

最低1口は納付が必要

受取額 支払保険料+運用成果 契約時の年齢等に応じて決定
利回り 商品によって異なる 確定給付。予定利率は1.5%(2016年4月以降加入の場合)
給付開始 60歳もしくは65歳 60歳~70歳の間
途中解約 停止措置は可能 不可
受取方法 受給時に決める

(一括、終身年金、併用)

加入時に決める

(終身、有期)

利用停止 企業年金がある会社に勤務するとき。勤務先に企業型401Kがあれば引継ぎ可能。 第1号被保険者でなくなった時

どちらか一つを選ぶのであれば、個人型確定拠出年金の方が長期的なメリットは大きくなりそうです。

国民年金付加年金制度

個人型確定拠出年金や国民年金基金に加入するほど資金に余裕が無いという人でも、僅かな負担で節税&老後への備えができる制度もあります。少額でも非常にお得な、付加年金制度です。月額400円の納付で、200円✕納付月数の付加年金を受け取ることができます。もちろん、全額所得控除の対象です。

額が小さいので、節税効果はわずかかもしれませんが、トータルで見ると非常にお得ですので、まだ始めていない人は導入をオススメします。

ふるさと納税

テレビや雑誌でも話題になっているので、既に導入している人も多いかもしれません。2,000円分は手出しが必要ですが、それ以上の寄付額を寄付金控除に計上できます。寄付金控除の限度額は住民税の20%が目安です。

所得額が大きいほど、節税メリットが高くなります。あまり「個人事業主のための節税制度」というわけではありませんが、全国各地の返礼品を手に入れたり、生まれ育った自治体に納税できたりというメリットがあります。

どの自治体に寄付しても、節税額は寄付金額に応じて一定です。各種ポータルサイトがありますから、比較してみると良いでしょう。

ふるさと納税制度の仕組みやメリットについては、こちらのページで詳しく解説しています。詳細について確認したい方は、ぜひご覧ください。

その他の控除

確定申告の際には、上述の控除以外にも住宅ローン控除、医療費控除、生命保険・地震保険料控除、雑損控除など様々な控除が準備されています。

医療費が10万円を超えそうな年は、領収書を忘れずに保管しておきましょう。これらも、自分から申告しなければ、自動的には控除されませんから、該当する場合は忘れないようにしましょう。

※たとえば、保険料であれば確定申告時期が近づくと、「控除証明書」が送付されます。底に記載の内容を申告書に記載します。

こまめに記帳する習慣をつけて節税

節税を効果的に行うためには、記帳作業をこまめに行い、「売上」と「利益」の状況がすぐに分かる状況にするのが望ましいです。

確定申告直前に準備しても、新たな経費は計上できない

個人事業主が避けては通れない「確定申告」。1月~12月の売上状況について、翌年の2月15日~3月15日の期間に申告書を提出します。

ということは、申告書提出直前にはもう節税についてできることはないのです。経費を計上するための買い物や、所得控除のための手立てを打とうと思っても、どうしようもありません。

日々コツコツと入力し、状況に応じて年内に経費精算できるものがないか確認するというのが節税のためには重要な観点です。

節税のカギを握るのは12月

確定申告書類作成は翌年の2月でも、売上や経費の状況は、12月の時点で一度把握しておきたいもの。年内の売上目処も立っていると思いますから、その時点での事業利益を確認することで、必要に応じて12月に経費や所得控除額を増やすことができます

予想よりも納税額が高くなりそうであれば、

  • 何か購入が必要な物がないか考える
  • 未納分の年金を追納する
  • 国民健康保険・国民年金等の社会保険料を前納する
  • 中小企業倒産防止共済に加入する

といった対策を考えましょう。

12月であれば上記の対応が取れますが、1月になってしまうと、節税に対してできることはなくなります。せめて、毎月定期的に入力するタイミングを作っておきたいですね。そうすることで、常に事業利益の状況も分かりますし、確定申告期の作業負担も減りますよ。

税理士に依頼することで節税になる?

外注費だけでなく、専門家に依頼した際の報酬も全額経費として計上できます。個人事業主で依頼する可能性が高いのは、税理士。決算時のみでも、顧問料も、全額経費となるのです。

税理士費用は高い…というイメージがありますが、顧問料+決算対応でも20万円~30万円ほど。決算時の書類作成だけなら、10万円もかからないことがほとんどです。直接対面しない、通販型の税理士を選べば、更に費用は抑えられます。

さらに、自分では気づかないような節税対策についての助言ももらえるかもしれません。

税理士に依頼すると、

・税理士報酬が全て経費になる

・節税についてのアドバイスが得られる

・税務作業の負担が減る

とメリットばかり。トータルで考えると、節税効果以上のお得さがあります。

利益が大きくなったら法人成りを検討

個人事業が一定の売上をキープでき、経営が安定してきたら、会社を設立することで節税になる場合があります。個人事業主が法人化することを「法人成り」といいます。その節税メリットについて考えてみましょう。

法人成りのメリット

法人を設立することで、個人事業主ではできなかった次のことが可能になります。

法人化すると法人税も発生しますが、個人の所得税も、法人税も節税できるテクニックです。

事業主も給与所得控除ができる

個人事業主の場合、使えない所得控除があります。それが「給与所得控除」。一般のサラリーマンは、受け取った給与から一定額を控除された額に、所得税が課せられていました。

しかし、法人化すると、個人事業主自らに役員報酬を支給する形を取れるため、事業主自身も給与所得控除を受けられます。その分、支払う所得税や住民税の額が節税できます。

家族に給与を支払える

個人事業主の場合、同居の家族に給与を支払う場合、一定の制限がありました。しかし、法人成りをすると配偶者、子ども、両親など親族に対しても給与を支払うことが可能になります。

つまり、所得を分散させることができるのです。

退職金を費用にできる

個人事業主の場合、事業主自身に支払う退職金は必要経費として認められませんでした。しかし、法人成りをすると事業主に支払う退職金も、法人の費用として計上できます

消費税を2年間節税できる

法人は原則として設立1期目と2期目に関しては、消費税の免税の対象となります。個人事業の課税売上が1,000万円を超えると消費税納税義務が発生しますから、売上が1,000万円以上あれば、法人成りするだけで消費税が2年分節税できるのです。

消費税免税制度を使って節税する裏ワザについては、こちらのページでも紹介していますので、合わせてご覧ください。

出張手当の設定ができる

個人事業主が出張する場合、旅費や宿泊費の実費は経費計上できますが、出張日当を必要経費にはできません。しかし、事業主に対しても出張手当を支払い、経費として計上できます

社宅を費用計上できる

個人の場合、自宅を事業場にしていても、家事按分した一部しか費用として計上ができません。しかし、法人名義で借りることで、社宅として、家賃を費用計上することができます!また、法人名義での購入も可能です。社宅家賃の一部を負担する必要もありますが、全て自分で借りるよりも安く、しかも節税につながります。

生命保険料を費用計上できる

個人で生命保険などに加入しても、所得控除が認められているだけ。年間12万円という上限もありました。しかし、法人成りをして事業主を被保険者とする生命保険に加入すると、上限なく保険料を法人の費用として計上できます。法人名義で生命保険に加入する場合、事業主だけでなく、役員である親族や従業員も対象にできるというメリットも。

税率が一定

個人事業主が支払う所得税は「累進課税」。最高税率は40%で、稼げば稼ぐほど税金が高くなる…という状態です。しかし、法人に課せられる税率は、年間所得が800万円以下なら15%まで。最高でも25.5%の一定税率です。会社の事業規模が大きくなるほど、この税率差は大きな意味を持ちます。売上が大きくなると、法人成りの節税メリットが高くなるというのはこういう理由があるのです。

法人成りした場合の節税シミュレーション

個人事業主として売上が1,000万円、経費が500万円の人が、法人成りして利益の500万円を役員報酬として受け取る場合の税金額を比較してみましょう。(青色申告、配偶者控除ありと仮定します)

個人事業主の場合 法人の場合
事業主 会社
売上 1,000万円 1,000万円
経費 500万円 1,000万円

(500万+

給与500万)

事業主の利益 500万 500万
給与所得控除 154万
所得合計 500万 346万 0円
所得税/法人税 約57万 約26万 0円
住民税 約50万 約34万 約7万
事業税 約10万 0円
支払い税額 約117万円 約67万円

※あくまで、ざっくりとした比較です。その他の控除状況によっては、差額が変動します。

この比較を見ても分かるように、事業利益が500万円程度の場合、約50万円納税額差が出てきます。法人の場合はさらに経費を増やすこともできますから、法人税を合わせて納税額をより節約することも可能です。

とはいえ、売上が少ない段階での法人成りはおすすめしません。法人化すると、社会保険の加入が義務化され、法人としての負担も増える他、法人設立や廃止の際の登記にも費用が発生するからです。また、赤字の場合でも法人住民税が毎年ランニングコストとして発生します。

法人成りを検討すべき利益額は?

では、どのくらいの利益から法人成りを検討すべきなのでしょうか。一般的には、売上1000万か利益500万を目安に健闘を開始するのが良いとされています。

年間利益が500万~1,000万円の間は、法人成りで節税になる人が多くなります。ただ、事業形態によっては、振りになる可能性もあるので、慎重な判断が必要です。

年間利益が1,000万円を超えている場合は、個人事業主のままでは大きく損をするばかり。一刻も早く法人化に向けて検討をすすめるべきと考えてよいでしょう。

法人成りすべきか迷ったら、税理士に相談を

自分の事業の状況で法人成りするのがお得なのか、迷うことが多いと思います。そんな時は、現時点での経営状況が分かる資料を添えて、税理士に相談をすることをおすすめします。

法人成りした場合の税金をシミュレーションしてくれますよ。さらに、家族の雇用を考えている場合は、役員報酬をいくらにすると節約効果を最大限に発揮できるかという点もアドバイスを貰えます。

法人化する場合は、経理的にも作業が増えますし、会社設立自体も行わなくてはなりません。税理士の中には、安価で会社設立の手続きを行っている方もいますから、まとめて依頼することもできます。法人成りを検討する段階では、事業自体も忙しいことと思います。慣れない手続きに手間と時間をとられるより、専門家のアドバイスを聞きながら、より有利な方を選んでください。もちろん、税理士に依頼した際に発生する税理士報酬も、経費として計上できますよ。

まとめ

いかがでしたか。少しでも、税金負担は減らしたいもの。個人事業主は、工夫次第で節税を行うことができます。

今すぐできる節税対策をまとめると、以下のとおり。

  • 青色申告を選ぼう
  • 家事按分で生活費の一部を経費にしよう
  • 30万円未満の物品を購入して経費にしよう
  • 交際費を活用しよう
  • 中小企業倒産防止共済に加入しよう
  • 小規模企業共済に加入しよう
  • 公的個人年金に加入しよう
  • 12月には事業利益の確認をしよう
  • 税理士を活用しよう
  • 売上が1,000円を超えたら法人成りを検討しよう

この記事で紹介した方法を元に、早め早めに対策をとってくださいね。

関連リンク:節税のための所得税入門

(編集:創業手帳編集部)

本記事の内容は、記事執筆日時点 の法令・制度等に基づき作成されています。最新の法令等につきましては、弁護士や司法書士、行政書士、税理士などの専門家や法務局等にご確認ください。
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