企業によって、従業員に賄いを出したり、夜食代として手当を支給する場合もあるようです。従業員にとっては非常にありがたい制度だと思います。しかし、経営者側の目線で見た時に、いくつか気を付けていかなくてはいけないこともあるのです。
例えば「従業員への食事・食事代の提供」をどの様に処理するかも、重要な注意点。今回は、従業員へ食事の提供、食事代の支給をする際に気を付けるべきことをまとめてみました。一つひとつは小さな金額ですが、積み重なると大きな負担になります。足元を掬われないように、今後の参考にして下さい。
食事代や食事の支給が「給与扱い」にされてしまう?!
従業員への食事代は、福利厚生費もしくは給与のどちらかで処理される場合がほとんどです。会社によって様々なケースが考えられるので、一口にどちらが良いと言えるわけではありません。しかし、給与になった場合には「源泉徴収義務が生じる」こと、消費税法上「仕入れ税額の控除の対象にならない」ということを念頭に置く必要が出てきます。
例えば、従業員の食事代を数年間「福利厚生費」として処理していたとしましょう。この食事代が、税務調査に入られてときに「給与認定」をされてしまいました。当然過去に渡って遡り「源泉徴収税」と「消費税の仕入れ税額の否認」が全て請求されることになるのです。これはキャッシュフローを大きく乱す一大事。
つまり食事代を福利厚生費として処理する場合は、給与と見なされない工夫をする必要があります。
ではどのような食事代が「給与」と見なされてしまうのか?!
では、いったいどのような食事代が「給与」と見なされてしまうのでしょうか。給与になってしまう条件をキチンと把握しておけば、給与と見なされキャッシュフローを乱される危機も回避できるはずです。状況別に見てみましょう。
通常勤務時間中の食事代の場合
通常勤務時間の食事代については、原則的に給与と見なされてしまいます。では、通常勤務時間には食事代を支給することは出来ないのでしょうか。実は、以下の2つの条件を満たしていれば、福利厚生費で処理しても問題ないのです。
- 役員や使用人が、食事の価格の半分以上を負担している場合。
- 食事の価格-役員や使用人が負担している金額=3500円(税抜き)
※ 一か月あたりの計算です。
ちなみに食事を現物支給でなく、3500円以下の金銭で支給する場合は給与と見なされます。この点にも注意が必要です。
残業中に支給される食事代の場合
通常勤務時間と違い、勤務時間外の勤務いわゆる残業中の食事代については、会社側の都合でやむを得ず残業したと考えられるため、通常給与と見なされません。
一般的な視点で見た場合に「高すぎない」という前提が必要ですが、回数の制限はありません。残業時に必ず支給した場合でも、給与で処理する必要がないということになります。
ただし、これは食事を現物支給した場合に限られます。金銭で食事代を支給した場合は給与として処理しなくてはいけません。従業員が食事代を立て替え、それを金銭で精算すれば給与にはなりませんが、その場合は食事代の領収書を必ず回収する必要が出てきますので、注意しましょう。
深夜勤務者の“夜食代”はどのように考えればいいのか?!
食事代が給与と見なされる条件が解ったと思います。しかし正規の勤務時間帯が、午後10時から翌午前5時までになる深夜勤務者の場合は、前述のようにはいきません。深夜勤務者には別の「ルール」が適用されるのです。
- 夜食代の金銭支給は、原則的に給与と見なされます。
- 勤務ごとに300円以下の定額を、通常の給与に加算して金銭支給した場合は、食事代は給与として見なされるが、非課税で処理。ただし給与ではあるので、消費税の仕入税額控除をすることは出来ません。
- 夜食を現物支給した場合は、昼間の勤務者と同じです。「役員や使用人が食事代の半分以上を負担していること」「食事の金額-躍進や使用人が負担している金額=3500円(税抜き)以下※一か月あたり」の条件をクリアしていれば給与にはなりません。条件を満たしていなければ当然給与として処理する必要があります。
大筋は昼食代とほぼ同じ処理の仕方になります。ただ、少し違う点もあるので、そこだけ注意しておきましょう。
まとめ|食事代は積み重なると大きな負担。日頃から細かいチェックを
どうでしたか。食事代が給与に見なされる条件のことがよくわかったと思います。食事代は一つひとつは小さい金額でも、積み重なっていくと大きな負担になっていくはずです。さらに福利厚生で処理していたのに、給与にされてしまい追徴となってしまったら、目も当てられません。
福利厚生として処理できるものは福利厚生、給与になってしまうものは給与で処理と、正しい処理をしておけば、追徴されてキャッシュフローを乱されることも起こらないはず。日頃から帳簿はチェックしておきましょう。
- 今回のポイント
-
- 従業員の食事代は、通常給与と福利厚生費で処理される
- 福利厚生費で処理していた食事代が、税務調査で給与にされてしまうと、過去に渡って遡り「源泉徴収税」と「消費税の仕入れ税額の否認」が全て請求されることになる
- 通常勤務時間の食事代は、原則的に給与で処理しなくてはいけない
- ただし、「役員や使用人が、食事の価格の半分以上を負担している場合」「食事の価格-役員や使用人が負担している金額=3500円(税抜き)※一か月あたり」の条件が満たされる場合は給与として処理しても良い
- 残業中の食事代は、基本的に給与とは見なされないが、現物支給の場合に限られる。従業員が立て替えたものを金銭で精算すれば問題ないが、領収書の回収が必須
- 深夜時間帯の食事代も、基本的には昼間の食事代と同じで給与になる(給与とならない条件同じ)
(編集:創業手帳編集部)