個人事業でも法人運営であってもビジネスである限り「お金のやり取り」が必要です。そしてお金を受け取った以上は「受け取った証」として「領収書」を発行する場合もあります。ちなみに領収書のやり取りが発生した場合に「印紙」が必要になる場合があることはご存知の人も多いと思いますが、この印紙が実は納税作業であることを知っていたでしょうか。
今回は印紙税の視点から考える節税対策を基本から見直してみたいと思います。領収書の発行枚数が多く印紙の消費スピードが速い事業にとっては、手っ取り早い節税対策になるので参考にしてください。
そもそも印紙はなぜ必要なのか?基本から考えてみよう!
ビジネスを行う上で金銭の授受は必須事項です。そしてお金のやり取りがある以上、料金を受け取った証として「領収書」を作成しなくてはいけない機会も増えていきます。普段は何気なく発行しているこの領収書、いったいどういった意味を持っているものなのでしょうか。
実は領収書は税法上「課税文書」に該当する書類になります。ざっくり言うと発行するために税金を納める必要がある書類であり、その税金を「印紙税」と呼ぶのです。その印紙税を支払うために印紙を貼っているということになります。
印紙税が課税される可能性がある発行物にはどんなものがあるか?
では、印紙税の課税対象になる発行物にはどんなものがあるのでしょうか。
課税文書と言うものが生まれた趣旨は「文書を作成し取引を明確化することで、法律系の取引が安定する。その対価として税金を支払って下さい」ということになります。
つまり基本的には、金銭の授受が発生する取引を示す文書は、全て印紙税が課税される可能性があるのです。例としては
- 領収書を含む「受け取り書」「レシート」「預かり書」と書かれているもの。
- 料金を受け取ったという事実を証明するため「代済」「相殺」「了」などの記入がされた請求書や納品書。
- お買い上げ表などの料金の受け取りと商品の買い上げの証明がされている書
類
などです。詳しい種別については「国税庁HP印紙税額一覧表」に20種が明記されています。また、取引を証明する書類のなかに「非課税文書」も存在します。例としては
- 課税文書(印紙税額一覧表)の中でも非課税文書の欄に記載されているもの。
- 国や地方公共団体または印紙税法別表第2(信用保証協会など)に掲載されたものが作成した文書。
- 印紙税法別表第3(国民健康保険受取書など)に掲載されたものが作成した文書。
- 特別の法律により非課税とされている文書。
などがあります。ただし、この辺りについてもかなり微妙な判断が必要な書類もあるのも事実です。後々問題になる可能性もあります。不安がある場合はまず専門家に相談と言うスタンスでもいいかもしれません。
では一体記載金額がいくらであれば印紙税が必要になるのか?
課税文書か非課税文書か判断する際に最も重要になってくるものが「記載金額」になってきます。この記載金額と税額の関係性を表にまとめてみました。
売上代金に関わる受取書(領収書)の記載金額と税額の関係表
記載金額 |
税額 |
5万円未満 |
課税なし |
5万円以上 ~ 100万円未満 |
200円 |
100万円超え ~ 100万円以下 |
400円 |
200万円超え ~ 300万円以下 |
600円 |
300万円超え ~ 500万円以下 |
1,000円 |
500万円超え ~ 1,000万円以下 |
2,000円 |
1,000万円超え ~ 2,000万円以下 |
4,000円 |
2,000万円超え ~ 3,000万円以下 |
6,000円 |
3,000万円超え ~ 5,000万円以下 |
10,000円 |
5,000万円超え ~ 1億円以下 |
20,000円 |
1億円超え ~ 2億円以下 |
40,000円 |
2億円超え ~ 3億円以下 |
60,000円 |
3億円超え ~ 5億円以下 |
100,000円 |
5億円超え ~ 10億円以下 |
150,000円 |
10億超え ~ |
200,000円 |
● 営業に関しない取引については非課税です。
売上代金以外の受取書の場合の記載金額と税額の関係表
記載金額 |
税額 |
5万円未満 |
非課税 |
5万円以上 |
200円 |
● 営業に関係しないものは非課税です。
● 売上代金の金額と売上代金以外の金額が同じ受取書に記載されている場合は、その合計の記載金額が5万未満であれば非課税となります。
2つの表を見てみるとはっきりしますが、記載金額が5万円以内であれば非課税になるのです。記載金額ごとの税額を把握し正しい金額の印紙を貼ることはもちろん重要になりますが、5万円未満に記載金額を抑えるということも節税に関しては重要になってきます。
領収書の作成方法をちょっとだけ工夫して賢く節税しよう!
上記の表をみることで、記載金額が小さければ税額も低くなっていることがわかると思います。そこで領収書の作り方をひと工夫するだけで、記載金額を小さく抑えることができるのです。それでは今日からできる工夫の仕方を紹介していきます。
消費税と商品価格を別々に記入することで記載金額を小さくできる!
領収書の記入方法を消費税と商品価格別々にすることで、記載金額を抑えることが可能になります。例えば商品価格(税抜)が49,500円の場合、消費税(8%)3,960円を足すと合計が53,460円です。
この場合、「代金53,460円(税込)」で記入する場合と「商品代金49,500円 消費税など3,960円 合計53,460円」で記入した場合とでは、印紙の金額は同じになるでしょうか。
答えは「NO」です。税込価格のみ記載の前者は200円、税別記入の後者は非課税になるのです。商品価格と消費税を別々に記入している場合は、税別価格である商品価格が印紙税の対象になります。まさに今日からできる節税対策です。税別記載の領収書は市販されているので入手も容易になります。
ちなみにこの取り扱いが可能な課税文書は「土地建物の売買契約書」「工事請負契約書」「領収書」となっており、法的にも認められているのです。ただ、実際に業務に活かしていく場合には専門家に確認した方がいいかもしれませんね。
領収書を複数枚に分けて記入することで記載金額を抑えることができる!
少し裏技的なテクニックになりますが、領収書をあえて複数枚に分けて作成することで記載金額を小さくすることが出来ます。例えば総額で「8万円」の商品の領収書を1枚で作成した場合、印紙税は200円です。これを「3万円」と「5万円」の2枚の領収書を作成することで、印紙税を0円にすることが可能になるのです。
ただし顧客に発行する書類になるため、イメージも考慮に入れて対処することが重要になってきます。お客様に許可を得て2枚で作成することはもちろんですが、2枚に分けても自然な印象を持ってもらえるように価格設定の段階から工夫をしていく必要もあるかもしれません。
まとめ|印紙税をきちんと理解しルールに基づいた節税をしよう!
どうでしたか。領収書と印紙税のルールと簡単な節税方法が分かったのではないでしょうか。一枚の印紙税は小さくても、積み重なることで莫大なものになってしまう可能性もあります。節税は小さなことからコツコツと行っていくことが基本です。今まで意識してこなかった人たちは、この機会に見直してみてください。
- 今回のポイント
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- 印紙税の課税対象になる発行物をきちんと理解すれば、余計な印紙税を払わなくて済む
- 記載金額と税額の関係を把握し、適した印紙を貼ることが重要
- 領収書は商品本体価格と消費税を別々に表記し印紙税を節約する
- 領収書を複数枚に分けて作成することでも印紙税を節約できるが、イメージ対策も忘れずに
(編集:創業手帳編集部)