相続不動産の固定資産税|相続人が確定するまで故人の税金を負担するのは誰?
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この記事では、相続人が確定していない段階の相続不動産の固定資産税は、一体誰が払うべきなのか、相続人は何をするべきなのかといった対策について詳しくご紹介します。
目次
相続不動産の固定資産税は誰が納めるべき?
結論からいうと、時期によって固定資産税を支払うべき人(納税者)は異なります。
固定資産税の納税者の変移
固定資産税の納税者は、時期によって次の3つの段階に分かれます。
- 故人(被相続人)が亡くなる前まで・・・故人(被相続人)
- 被相続人が亡くなった後から、相続財産の所有者が決まるまで・・・相続人全員
- 所有者が決まった後・・・所有者
順番に解説していきます。
1.相続開始日より前の固定資産税の納税は、故人(被相続人)の義務
故人(被相続人)が亡くなった日より前の固定資産税は、故人(被相続人)が納税することになります。
そのため、故人(被相続人)の預金などから支払っても構いません。
現金が手元になかったり、銀行口座が凍結してしまっていたり、固定資産税が支払えない場合は、相続人の代表者が立て替えて、相続財産の算出の際に精算します。
2.相続開始日以降の固定資産税の納税は、相続人の全員の義務
故人(被相続人)が亡くなってから、遺産分割協議で新しい所有者が決まるまでは、相続人全員の連帯債務になります。
固定資産税の支払い方については、相続人同士で話し合って決める必要があります。以下のような支払い方法が考えられます。
- 代表相続人を決めて、固定資産税を立て替える
- 法定相続分の割合で、固定資産税を分割して、相続人で支払う
一般的には、相続代表人を決めて、その人が立て替えて固定資産税を納めるのが通例です。代表相続人となったからといって、納税上の全負担を負うわけでもありませんし、所有者になるわけでもありません。
あくまでも、固定資産税を納める上での便宜上の代表者という扱いになります。
3.遺産分割協議後は、所有者の義務
遺産分割協議が調い、新しい所有者が決まれば、固定資産税はその所有者が納税することになります。遺産分割協議とは、相続人全員で被相続人の遺産の分け方について協議することです。
遺産分割協議がまとまる前、相続人の誰か、もしくは相続人全員で立て替えている固定資産税についても、新しい所有者が支払う必要があります。固定資産税を立て替えている相続人が新しい所有者に求償して、立て替えた分を返金してもらうことができます。
なお、新しい所有者は相続登記をして名義を変更しなくてはなりません。相続登記は令和6年4月1日より手続きが義務化されています。
固定資産税の支払いは年4期に分けられる
建物や家屋にかかる固定資産税は、毎年1月1日の時点でその不動産を所有している人に「固定資産税納税通知書」が届くシステムになっています。1月1日の時点で、固定資産税課税台帳に「所有者」として名前が記載されていれば、たとえその人が亡くなっていたとしても、固定資産税課税通知書が届きます。
固定資産税の納税通知書が届くのは年に一度ですが、固定資産税の納税時期は、年4回あり、第1期~4期に分けられます。相続が発生したタイミングや、固定資産税の納税時期も自治体によって異なります。詳細は自治体の税務署にお問い合わせください。
固定資産税の納税時期(一例)
- 多くの自治体:4月・7月・12月・2月
- 東京23区:6月・9月・12月・2月
固定資産税はどうやって決まる?
固定資産税とは、所有する固定資産に課せられる地方税です。固定資産税評価額をもとに算出される課税標準額に、標準税率を掛け合わせて決まります。
土地や家屋のほか、償却資産(事業用資産)も固定資産税の課税対象となります。
固定資産税の対象
- 土地
田、畑、宅地、塩田、鉱泉地、池沼、山林、牧場、原野、その他の土地(雑種地) - 家屋
住家、店舗・工場(発電所・変電所含む)、倉庫、その他の建物 - 償却資産
構築物、機械・装置、工具・器具及び備品、船舶、航空機などの事業用資産で、法人税法又は所得税法上、減価償却の対象となるべき資産。ただし、自動車税種別割、軽自動車税種別割の課税対象となるものは除く。
固定資産税の算出方法について
固定資産税の納税額は土地や建物の場合、固定資産税評価額をもとに算出される課税標準額に、標準税率の1.4%を掛け合わせて求められます。
ちなみに固定資産税評価額は、土地の公的価格や、家屋の時価額をもとに算定されます。3年に1度の間隔で評価替えが行われ、その時点の地価などに応じて、金額が決まります。
そのため、地価が安い時期や安い地域は固定資産税も安く、地価が高騰している時期や地域では固定資産税も高くなります。
土地、家屋、償却資産、それぞれの評価額の求め方をご紹介します。
土地の評価額の求め方
土地の評価額に関しては、土地の面積に路線価を掛け合わせた、「路線価方式」によって算出されます。
路線価とは地域の路線に面した標準宅地1平方メートルあたりの評価額のことです。地価公示価格、売買実例価額、不動産鑑定士等による鑑定評価価額、精通者意見価格等を基に決められます。
路線価は、国税庁のホームページ、「路線価図・評価倍率表」で調べることができます。
家屋の評価額の求め方
家屋の評価額は、「再建築価格方式」によって算出されます。
再建築価格方式とは同じ建物を同じ土地に建てたらいくらになるかという家屋の単価を算出し、経年劣化分を減価することで求める価格方式のことです。
「評点1点あたりの価額」は、家屋の資材費、労務費の地域格差などを反映して算出します。家屋の固定資産税は、「家の購入金額の7割」に税率を掛けることによって、おおまかな金額を把握できると言われています。
より正確な金額を知りたい場合は、建物が新築なのか中古なのか、また建ててからどのくらいの年数が経過しているのかという点も考慮する必要があります。
償却資産の評価額の求め方
償却資産の評価額については、償却資産を取得した年月や、取得したときの価格、耐用年数などをもとに算出されます。
算出された金額が取得した当時の金額の5%を下回った場合、取得価格の5%に相当する金額が評価額となります。償却資産を取得したのが前年度なのか、前年度以前なのかによって計算式が異なります。
償却資産の評価額の計算式
※減価率とは、建物の劣化を数字で表したものです。
相続財産の固定資産税を納税する際の注意点
所有者が決まっておらず、誰が固定資産税の債務者になるのか決まっていない場合でも、固定資産がある限りは、固定資産税は発生し、相続人には納税の義務があります。
固定資産税の支払いに関して、覚えておくべきポイント3点をご紹介します。
ポイント1.固定資産税の支払い期限に注意する
固定資産税については、1月1日時点の所有者に、固定資産税納付通知書が届きます。たとえ所有者が亡くなっていた場合でも納付期限に猶予はなく、相続人に支払いの義務が生あります。
納付期限を過ぎてしまうと滞納税が発生しますので、相続人の間で早めに話し合って、期日内に支払うようにしましょう。
ポイント2.故人の口座の状態を確認しておく
故人(被相続人)が亡くなるまでの固定資産税については、故人(被相続人)が納めるべきものですので、法律上は、故人(被相続人)の預金から支払っても問題ありません。
しかし、故人(被相続人)の金融機関の口座は、被相続人の死亡を金融機関に伝えた時点で凍結されてしまうため、支払いに当てたい現金が引き出せないことがあります。
口座凍結はなぜ起こる?
口座の凍結には2つの理由があります。ひとつは、相続財産を確定させるため、もうひとつは相続人同士のトラブルを防ぐためです。
金融機関の、故人(被相続人)口座に残っている預貯金は、相続財産になります。相続人の共有財産になると共に、相続税の課税対象になります。自由に引き出せるようにすると、相続税の脱税が起こる可能性もあります。また相続人の誰かが不当に引き出してしまうこともあり得ます。
そのため、遺産分割協議が終わるまでは、その口座における一切の取り引きを停止しておく必要があるのです。たとえ通帳やキャッシュカードがあり、暗証番号がわかっていたとしても、口座の凍結以後は現金を下ろすことはできなくなります。
口座凍結を解除するには?
金融機関の口座が凍結されてしまった場合、必要書類を金融機関の窓口に提出することで口座凍結を解除することができます。
解除の仕方や必要書類は、金融機関によっても異なる場合もあるので、金融機関に直接問い合わせる必要があります。
凍結解除に必要な書類(一例)
- 故人(被相続人)の出生から死亡までの戸籍謄本
- 故人(被相続人)の死亡が確認できる書類(住民票の除票、死亡診断書など)
- 相続人全員の現在の戸籍謄本
- 相続人全員の印鑑証明書、キャッシュカードなど
ポイント3.遺産分割協議の長期化を見越して早めに対策をとる
相続や遺産分割協議では、予期せぬ相続人がいたり、相続財産が多岐にわたるなどで、協議がまとまらず長引くこともあります。
遺産分割協議が長引き、相続不動産の新しい所有者が決まらない場合でも、固定資産税の納付には期限があります。固定資産税に関しては、遺産分割協議の決着を待たずに、代表相続人が立て替えておくのが得策です。
固定資産税の納税~遺産分割協議前~
では、実際に遺産分割協議で新しい所有者が決まるまでは、誰がどのように固定資産税を支払うのでしょうか。
相続人の代表者が支払う場合
まず、考えられる方法は、相続人の代表者が払うパターンです。相続人の中で話し合った上で、相続人の代表者となる代表相続人を決め、その人が固定資産税を立て替えます。
1.固定資産税納付通知書の記載額を税務署に納付
代表相続人が、故人(被相続人)宛に届いた固定資産税納付通知書に記載されている額を、期限内に支払います。
2.固定資産税の代表者指定届を提出
代表相続人が、管轄の税務署に「固定資産税の代表者変更届け」を提出します。
代表者変更届けを提出することで、税務署側が固定資産税納税通知書の届け先を把握できるようになります。新しい所有者が決まり、不動産登記の変更をするまでは、指定された代表者の元に、固定資産税納税通知書が届くようになります。
3.新所有者に払い戻してもらう
遺産分割協議で新しい所有者が決まったら、その人が固定資産税の納税義務者となります。
相続が開始してから遺産分割協議が決まるまでの固定資産税も、新しい所有者に支払いの義務があります。
代表相続人が立て替えていた固定資産税を、新しい所有者に払い戻してもらいます(代表相続人が所有者になった場合は、払い戻しの工程は必要ありません)。
相続登記をして不動産の名義が変更されると、以降は新しい所有者に固定資産税納税通知書が届くようになります。
相続人全員で分割して支払う場合
相続不動産に関しては、新しい所有者が決まるまでは、相続人全員の共有財産になります。ここでは固定資産税を相続人全員で分割して納める方法をご紹介します。
1.固定資産税納付通知書の記載額を税務署に納付
まずは、相続人の代表者が故人(被相続人)宛に届いた固定資産税納付通知書に記載されている額を、期限内に支払います。
2.全員で分割(法定相続分と同じ割合で分割)
法定相続分と同じ割合で固定資産税を分割し、相続人全員のそれぞれの負担額を決めます。決められた金額を、立て替え払いした代表者に、相続人全員がそれぞれ支払います。
※納付期限に時間的な余裕があるようなら、相続人全員から固定資産税の負担額を徴収し、相続人の代表者が固定資産税を納める方法でも構いません。
3.新所有者に払い戻してもらう
遺産分割協議で新しい所有者が決まったら、その人が固定資産税の納税義務者となります。
相続人が立て替えていた分の固定資産税を、それぞれ返金します。
相続放棄する場合
故人(被相続人)に多額の借金などがあり、相続財産の中でもマイナス資産のほうがプラス資産よりも上回った場合など、相続放棄をするという手も考えられます。
その場合、すべての相続財産を放棄するので、固定資産税が課税される相続不動産についても放棄することになります。
ただし、固定資産税はその年の1月1日の所有者が納税することになりますので、相続放棄が完了した時期によっては相続人が固定資産税を納めなければならない場合もあります。
故人の相続財産から支払いに充てる場合
手元に現金があった場合や金融機関の口座がまだ凍結されていなかった場合など、相続人同士で話し合った上で、故人(被相続人)の相続財産の中から、固定資産税を支払うことも可能です。
故人の相続財産から固定資産税を支払う手順をご説明します。
固定資産税納付通知書の記載額を税務署に納付
相続人の代表者が、故人(被相続人)宛に届いた固定資産税納付通知書に記載されている額を、故人(被相続人)の相続財産の中から、期限内に支払います。
相続財産から充てた場合、相続放棄できない
故人(被相続人)の相続不動産の固定資産税に関しては、故人(被相続人)が亡くなるまでは故人(被相続人)の債務となるので、相続財産から支払っても問題ありません。
しかし、故人(被相続人)が亡くなった後の固定資産税に関しては、相続人の共同債務になるので、それを故人(被相続人)の相続財産から支払った場合は、「相続した」とみなされて、相続放棄はできなくなります。
固定資産税の納税~遺産分割協議後~
遺産分割協議が終わり、新しい所有者が決まった後、固定資産税の支払いはどうすべきなのでしょうか。その手順をご説明します。
相続人のうち誰か1人が相続した場合
新しい所有者が決まった場合、固定資産税の納税通知書の送付先をその新しい所有者にするように変更します。
変更届けをしておかないと税務署から、亡くなった人宛に固定資産税納税通知書が届いてしまったり、「代表者変更届けのお願い」といった手紙が届くことがあります。
納税通知書の送付先を変更する方法
固定資産税の納税通知書の送付先を新しい所有者に変更するためには、以下のような方法があります。
1.法務局に相続登記
不動産の所有者が亡くなったときに、不動産の名義を相続人に変更する手続きを相続登記と呼びます。
法務局に相続登記の申請をすれば、不動産の所有名義が、故人(被相続人)から新しい所有者に変わります。固定資産税納付通知書も、翌年からは新しい所有者宛に届くようになります。相続登記には専門知識も必要になるので、司法書士に依頼することも可能です。
相続登記の手続きは義務化されています。相続等により所有権を取得したことを知った日から3年以内に、正当な理由がないのに申請を怠ったとき、10万円以下の過料の対象となるため注意しましょう。
2.税務署に相続人代表者指定届を提出
相続登記をすれば、自動的に納付先は、新しい所有者に変わりますので、相続人代表者指定届を出す必要はありません。
相続登記をしなかった場合でも、最低限やっておきたいのが、相続人代表者の指定届の提出です。税務署に相続人代表者指定届を提出し、翌年以降の固定資産税の納付通知書の送付先を指定します。
3.固定資産税の仮払い分の支払い
相続開始から遺産分割協議決定分までの固定資産税の仮払い分を、立て替えた人に返金します(新しい所有者が立て替えていた場合、この工程は必要ありません)。
共有名義にした場合
相続不動産については、相続人の誰か特定の人が相続するのではなく、共有名義にすることも可能です。
共有名義にした場合にやるべきことをご紹介します。
1.代表者を決める
共有名義にした場合でも、税務署からの問い合わせ窓口となる代表者を決める必要があります。税務署に、相続人代表者指定届を提出し、固定資産税の納付通知書の送付先を指定します。
2.支払った固定資産税を所定の割合で分割する
固定資産税については、共有名義となっている人全員の債務となります。とはいえ、固定資産税をその都度、分割し、全員から徴収して支払うようにすると、時間も手間もかかり、納付期限をすぎてしまうおそれもあります。
まずは代表者を決めて、代表者が一旦支払い、それを共同名義人で分割して、後から返金してもらうのが良いでしょう。
相続不動産の固定資産税Q&A
相続不動産の固定資産税について、具体的なご質問にお答えします。
Q:身に覚えのない不動産の固定資産税納税通知書が届いた場合は?
代襲相続などにより、身に覚えのない固定資産税納税通知書が突然届くケースもなかにはあります。
まずやるべきことは、その不動産がどのようなものなのか確認することです。
固定資産税を支払うほどの資産価値があるのかどうか、不動産の名義は誰になっているのか、相続人はほかに誰がいるのか、など詳しく調べる必要があります。
資産価値がないと判断できる場合は、相続を知ってから3ヵ月以内であれば、相続放棄も考えられます。資産価値があった場合も、名義が何代にもわたって変更されていなかった場合、相続人の数が膨れ上がり、売却するにも相続人全員の承認が必要になるなど、一筋縄ではいかないこともあります。
また固定資産税を支払ったからといって、その不動産が支払った人の所有になるわけではありません。
専門家に相談し、慎重に進めることをおすすめします。
Q:共有名義の相続不動産の固定資産税を滞納した場合は?
相続不動産を共有名義にした場合、共有名義人の誰かが固定資産税を支払ってくれないケースもありえます。
代表者が立て替えて納税していた場合は、税務上の問題はありませんが、代表者が固定資産税を滞納していた場合は、延滞税がかかります。
共有名義にした不動産の固定資産税については、その不動産の持分に関係なく共有者全員に連帯して全額を納付する義務(連帯納税義務)がありますので、延滞税に関しても、連帯納付義務が生じます。
最悪のパターンでは、相続不動産が差し押さえられるケースも考えられます。
共有名義にする場合は、関係者が増える分リスクもあることを理解した上で決めることをおすすめします。
まとめ
今回は相続不動産の固定資産税についてご紹介してきました。
固定資産税など税金の支払いについて不明な点がある場合は税理士など、専門家に相談することをおすすめします。
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この記事を書いた人
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