起業家であれば知っておかなくてはいけない「資金繰り」の知識。創業期には、いくつかのタイミングでまとまったお金が必要になってきます。その際に自己資金だけで賄えればいいのですが、そうはいかないのが不安定な創業期の悩みです。
今回は、資金繰りを考えた時に大きな力になってくれる「助成金と補助金」の解説をしていきます。銀行などの金融機関から借りることも、資金繰りの手段の一つです。しかし助成金や補助金のことをきちんと理解しておけば、そもそも借金する必要が無くなるかもしれません。この機会に、しっかり把握しておきましょう。
助成金と補助金の違いとは?!
そもそも、「助成金」と「補助金」とはどういったものなのでしょうか。ちなみに助成金も補助金も、いわゆる借金ではありません。返済不要であるものがほとんどです。では2つにはどんな違いがあるのでしょうか。助成金と補助金の違いについてまとめてみました。
助成金とは?!
助成金には、特に公募期間が限定されていません。通年の利用が可能であり、受給する資格要件を満たせば、高い確率受給することが出来ます。
一般的には、会社の人材に関する「厚生労働省系」のものが、助成金と呼ばれています。
補助金とは?!
補助金には、1,2ヶ月ほどの募集期間が設定されています。締めきってしまうと、翌年度まで申請することが出来ません。また、予算や採択数が確定しているため、受給資格要件が満たされていても、受給できない可能性もあります。
いわゆる「経済通産省系」のもので、事業計画書の提出などで、需給の妥当性や必要性のアピールが重要になってきます。
助成金と補助金の種類を知ろう|目的別で使い分ける!
助成金と補助金の性格の違いを理解したところで、実際に助成金や補助金にはどのようなものがあるのか紹介していきます。目的ごとにまとめたので、自分が必要な資金がどのようなことに使うお金なのかをきちんと把握していれば、大きな力になることでしょう。
ちいさな創業未来補助金|新規会社設立・企業の時に使おう!
国が認定する助言機関に相談する必要がある補助金になります。今後、起業・創業や第二創業を考えている「個人」「中小企業」「小規模事業者」が対象です。
補助内容は、「創業及び、販路開拓に伴う費用」「広告費」「弁護士・弁理士などの専門家の費用」が対象になります。補助金が100万円未満の場合は対象外と見なされるそうです。
補助される割合 | 補助の上限額 | |
地域需要創造型起業・創業 | 必要な予算の2/3 | 200万円 |
第二創業 | 必要な予算の2/3 | 500万円 |
海外需要獲得型起業・創業 | 必要な予算の2/3 | 700万円 |
※注意
- あくまでも「補助」のため、必要な予算の全額が受給されることはありません。
- 補助金の交付は「後払い」であり、実際に受け取るまでには時間がかかります
- 申請の際、事業を始めるにあたり「国が認定する助言機関(認定支援機関に認められた金融機関など)」に事業相談しなくてはいけません。また、創業後も一緒に事業に取り組んでいくことが条件になります。
- 補助対象期間は、公募の締め切りから約2か月目以降になります。
公式HP 中小企業基盤整備機構
雇用に関する2つの助成金も知っておこう!
- トライアル雇用奨励金(新規雇用を考えた時)
職業経験が無いなど「公共職業安定所長がトライアル雇用を必要と認めた人」を、3か月の使用期間で適性や能力を見極め、正式雇用に移行を進める助けをしてくれる制度です。奨励金は対象1名につき「月額最大4万円」、最長期間は3か月になります。
特徴:交付はトライアル雇用終了後の後払いになり、トライアル雇用開始日から2週間以内にハローワークに実施計画書を提出する必要があります。また、雇用保険の被保険者資格の取得をしなくてはならず、親族は対象外です。
公式HP 厚生労働省 トライアル雇用奨励金
- キャリアアップ助成金(非正規雇用の労働者対象)
正規雇用へ企業内でのキャリアアップするための助成金として、事業主を助成する制度です。創業期にはあまり利用する機会が無いかもしれません。
公式HP 厚生労働省 キャリアアップ助成金
雇用調整助成金|売上減少のときの頼みの綱
景気の悪化などで売り上げが減少したときに、一時的な雇用調整を行うことで雇用維持をした場合には、助成が行われます。「直近3ヶ月の売上が月平均10%以上減少している」「休業開始の2週間前をめどに計画書の提出が必要」等、条件はありますが、一時的な雇用維持には有効な手段と言えます。
公式HP 厚生労働省 雇用調整助成金
キャリア形成促進助成金|従業員に能力開発などが目的の教育を実施したいとき
中小企業の従業員に対して「職業能力開発」を実施する際に利用できる助成金になります。計画に基づき、教育・訓練を行った事業主へ、経費と賃金の一部が助成される制度です。受講者一人あたり、最大800円の時給が助成される場合もあります。原則、事業所一つにつき限度額は合計500万円です。その他、状況によって限度額やコースが変わってくるので、詳しくは公式HPを参考にしてください。
公式HP 厚生労働省 キャリア形成促進助成金
その他にもある魅力的な助成金制度
その他、自治体ごとに個性的な助成金制度があります。今回は港区の例を挙げているので、詳しくはHPを参照してください。
まとめ|返済不要な助成金を上手く使って事業を順調に進めよう!
どうでしたか。後払いのものが殆どになりますが、上手く使うことが出来れば、返済不要である助成金・補助金は資金繰りにとって大きな力になって来るはずです。今まで興味が無かったという人も、この機会に助成金の申請を検討してみてはいかがでしょうか。
- 今回のポイント
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- 助成金も補助金も、借金ではなく、原則的には返済不要
- 助成金は、公募期間が限定されておらず、受給資格が満たされれば高い確率で受給される
- 補助金は、募集期間が過ぎてしまうと、翌年度まで申請が出来ない。予算や人数上限が決まっているため、受給条件を満たしていても受給できない場合もある
- 助成金・補助金は、必要な予算の全てが補助されるわけではない
- ちいさな創業未来補助金のように、国が認定する助言機関に相談をする必要がある助成金がある
- 雇用や会社内のキャリアアップの補助、社員教育の補助してくれる助成金もある
- 雇用維持を目的にした助成金もあるので、売上減少に悩んでいるときには検討してみてもいい
- その他、自治体ごとよって異なる「個性的な助成金」があるので、関係する自治体のHPは必ずチェックする
(編集:創業手帳編集部)