起業する人にとって「役員報酬=社長の給料」というものは、非常に重要になってきます。起業するからには大きなリターンが欲しいと思うのも当然です。しかし単純に社長の給与を高く設定しても、節税の面から見た時に上手くいかないことも多く、たくさんの社長が自分の役員報酬額をどれくらいに設定すればいいか悩んでいるのではないでしょうか。

今回は、役員報酬を基本から理解しながら、節税・キャッシュフローの面から考える「役員報酬に関するテクニック」を学んでみようと思います。

役員報酬と何か|基本的なことから理解してみよう

そもそも「役員報酬」と「従業員の報酬」の違いが解っていない人も多いのではないでしょうか。原則的に役員報酬は「損金不算入」と言われ、経費として認められないという特徴があります。ただし、ある一定の条件を満たすことで、役員報酬も経費として認められるのです。

役員報酬を経費とするために知っておきたいこと

  • 定期同額給与→毎月一定の時期に定額で支払われる報酬のこと
  • 事前確定届出給与→事前に税務署に届出をし、その届出内容通りに支払われる報酬(賞与)のこと
  • 利益連動給与→大きな会社で認められている、出来高制のように利益に応じて支給される報酬のこと
  • 退職金→退職金は税制上優遇されています
  • ストックオプション→現金の代わりに支給される自社株のこと
  • 使用人部分の給与のなかで相当するもの→使用人兼役員の場合の、使用人部分に相当する給与のこと

まずこの6つが基本になってくるので、頭に入れておいてください。

状況別で考える|役員報酬を決める際の注意点

では実際に役員報酬を決めていきましょう。役員報酬は状況によって決め方が異なってきます。状況別で注意点をまとめてみたので、参考にしてください。

役員報酬の金額|報酬額によって税額が変わって来る?!

役員報酬の額を決定する際に重要になってくることは、「自分に多くお金を残す」のか「会社に多くお金を残す」のかによって、納税額が変わって来るということです。今回は年間の利益が800万円として試算してみました。

  1. 出来るだけ個人に利益が残るように設定する場合
  2. 会社の利益よりも個人(自分)の利益を重視するので、利益の全て「800万円」を役員報酬にして考えてみます。計算式は割愛しますが、基礎控除・所得税・住民税等を考慮して試算すると、納税額は126万円程度になるという結果が出ました。

  3. 会社に利益が残るようにした場合
  4. 資本金1億円以下の中小企業の場合、売上金額800万円までは15%・800万円超えると25.5%の法人税が課せられます。

    住民税・事業税を考慮した税率は23%と言われているので、試算した納税額は184百万円です。

上記を見てわかるように、会社に利益を残すか個人に利益を残すかで税率が変わってきます。会社と個人にバランスよく利益を残したいと思った時には、両方の税率を見比べて試算しなくてはいけません。

より詳しいシミュレーションをする場合は、税理士に相談した方が良いでしょう。

無計画に売り上げが伸びてしまうと黒字倒産の可能性も

売上が上がることは喜ばしいことです。しかし予想以上に売上が上がってしまうと、納税額が大幅に増えてしまいます。その時期が期末になった場合、すぐに納税のタイミングが訪れてしまうので資金繰りに苦労してしまうこともあるのです。場合によっては資金が用意できずに「黒字倒産」の憂き目にあってしまうことになりかねません。

役員報酬決算期から3か月の間しか変更できません。一度決めてしまった役員報酬は、その後1年間変更できないため、今期の利益を正確に見積もる必要があるのです。利益の見積もりが甘くなってしまえば、それだけ会社の財政を圧迫する可能性も増えることになります。

綿密に計算された「損益計画」の作成が重要になってくるのです。

その他注意すべき点

上記の内容が重要になってきますが、他にも注意すべき点があります。

  • 定期同額給与をキチンと守る
  • 使用人兼務役員にすることで納税の選択肢の幅が広がる
  • 法人税や所得税ばかりに注目しすぎて、社会保険料が予想以上に財政を圧迫してしまった

基本的な事ばかりになりますが、意外と見落としてしまう人も多いようです。上手く把握できない場合は、専門家に相談する方が確実と言えるでしょう。

役員報酬変更したい|定期同額給与を守りながら変更する方法

役員報酬を経費として認めてもらうには、「定期同額給与」であることが必須になってきます。基本的には決算期後の3か月しか変更できません。しかし、特定の場合には役員報酬の変更が認められる場合もあるのです。

役員報酬を減額するには?!

見込み通りの売上を上げることが出来ない場合は、役員報酬を同額で支給することが難しくなります。この場合、役員報酬を減額し、倒産の可能性を回避する必要があるでしょう。

役員報酬の減額が認められる条件は、以下の4つです。

  • 業績や財務が悪化し、株主との関係上において役員報酬を減額しなくてはいけない
  • 取引金融機関との借入金返済の予定協議において、役員報酬を減額しなくてはいけない
  • 業績や財務状況の悪化により、取引先などの利害関係者からの信用を維持するため、役員報酬を減額し経営状況の改善を図ると計画された
  • 特定役員が不祥事を起こし、会社秩序維持と社会的評価の悪影響の回避のために、その役員の報酬を減額した場合。ただし一時的にやむなく行われた措置であり、その処分内容が社会通念上相当のモノでなければいけない

役員報酬を増額するには?!

会社の売上が上がれば、自分の報酬を増やしたくなるのは当然のことです。しかし、役員報酬をいつでも増額できると、会社の利益操作が簡単に出来るようになってしまいます。また、意図的に法人税率を下げるとことも可能になってくるのです。

期中に役員報酬を増額する場合、「非常勤から常勤」「平から取締役」など、目に見えて仕事の責任が増えていることを明らかにする必要があります。満たさなければいけない条件として、

  • 定款の役員報酬総額の支給限度以内である場合
  • 臨時の株主総会の決議があり、その議事録が残されている場合
  • 報酬額が、不当に高額でない場合

の3つがあるので、注意しましょう。

また、遡っての増額・減額は出来ませんので、頭に入れておいてください。

まとめ|きちんとした損益計画を立て見合った役員報酬を

どうでしたか。役員報酬のことがわかったでしょうか。起業する際には「事業計画」を作ります。この計画がきちんとしていないと役員報酬も的確な金額で設定することが出来ません。上手く計画が立てられないのであれば、専門家へ相談してみてはいかがでしょうか。起業時こそ、税理士に相談する利点が大きい場合もあります。一度検討してみてください。

今回のポイント
  • 役員報酬を経費とするためには、定期同額給与などの6つの条件がある
  • 会社に利益を残す場合も、個人に利益を残す場合も、税率を考慮したバランスが重要。税率は変化していくので専門家のへ相談してみた方がいい場合もある
  • 売上増加のタイミングが決算期と重なると、納税額が上がり最悪の場合「黒字倒産」の可能性も。無計画な売上増加は厳禁、役員報酬も計画に基づき決定する
  • 原則として、定期同額給与は必ず守る
  • 役員報酬の減額するためには、「4つの条件」がある
  • 役員報酬を増額するためにも、相当であり明確な理由が必要である。

(編集:創業手帳編集部)