中小企業の会社経営で、どうしてもネックになってくるのが「会計」についてのことです。何か買い物をするたびに「このレシートはどのように処理すればいいですか」と確認することは不可能ですよね。

そこで今回は、企業会計の基本中の基本を解説していきます。会計の基本を理解しておけば、ある程度の範囲までであれば、経営者自として正しい自己判断が出来るようになるはずです。会計業務にあまり詳しくない経営者にとっては、目からウロコの情報になるので参考にしてください。

「企業会計の原則」学ぶ前に、おさえるべきポイント

会社法の第四百三十一条の条文に「株式会社の会計は、一般に公正妥当と認められる企業会計の慣行に従うものとする」という条文があります。この条文ある「公正妥当と認められる企業会計の慣行」というものが、企業会計の原則であると、一般的に解釈されているようです。

ここに出てくる聞きなれない言葉「公正妥当」とは、どういう意味でしょうか。法律上の言葉なので、わかりにくいのですが、意味自体は「一般的に考え正しく、偏っていない」という意味になります。

本来であれば、具体的に「偏っていない正しい慣行」というものを明示するべきかもしれません。しかし、会社が行う活動は流動的で予測できないものであり、時代の流れや周辺環境でも変化していきます。つまり、どんなに法・制度を整備しても対応しきれないため、具体的な名言をせず「公正妥当」と表現しているのです。

【一般に公正妥当な】企業会計原則の基本を知ろう!

では、「一般に公正妥当な」行動をとるためには、どうしたらいいのでしょうか。最終的には、いわゆるお役所や司法が判断する内容になりますが、「企業会計原則」を知ることで、基本的に妥当と見なされる行動をとる手掛かりになるはずです。今回は、この「企業会計原則」をきちんと理解しましょう。

真実性の原則

【企業会計は、企業の財政状態および経営成績に関して、真実な報告を提供するものでなければならない】

企業会計の具体手法は、企業側にゆだねられています。その範囲は「公正妥当な範囲」であれば相対的なもので十分であり、絶対的な基準はないとされているのです。

そこで、ドコの誰がどんな時に計算しても「全く同じ答え」になる必要はないが、本質が変わらない程度の正確性が求められるようになりました。

例えば、車などの減価償却を計算する場合、「毎年一定の比率(1/4など)で償却」「毎年一定額(90万ずつなど)で償却」「走行距離に応じて償却」というような方法が考えられます。どれも正しい方法なので、会社の規模や業務内容を考慮に入れて判断してもいいということです。もちろん償却価値や現在価値は「一般的に公正妥当」である必要があります。

正規の簿記の原則

【企業会計は、すべての取引につき、正規の簿記の原則に従って、正確な会計帳簿を作成しなければならない】

企業会計は、網羅性・立証性・秩序性の3要件が満たされていなくてはいけないと考えられているようです。これは、簡単に言うと「複式簿記を採用し、すべての取引の2面性を表現できるように帳簿を管理しましょう」ということになります。

取引の2面性の例を挙げると「商品の仕入れをする→経費として支払いが発生する」「製品をたくさん作る→必要な材料が減る」ということです。この関係性がきちんと帳簿上に記されていることが「複式簿記」の基本になります。

例えば、製品の在庫だけが一方的に増えているのに、在庫に合わせた材料費や人件費が増えていないと計上方法は複式簿記を守っていれば起こり得ない計上方法です。これは不正会計と見なされる典型的な事例なので、正しい複式簿記を行っていくことが重要になります。

資本取引 損益取引区分の原則

【資本取引と損益取引とを明瞭に区別し、特に資本剰余金と利益剰余金とを混同してはならない】

「本業収支」と、増資・社債の株式転換・投資などの本業以外の収支を、明確に区分して記帳しなさいということです。中小企業の場合は関連性が少ないかもしれませんが、収支内容はきちんと把握し、明確化しておきましょう。

明瞭性の原則

【企業会計は、財務諸表によって、利害関係者に対し必要な会計事実を明瞭に表示し、企業の状況に関する判断を誤らせないようにしなければならない】

財務諸表は、会社の債権者や株主に対して、間違った情報や誤解を誘導するような情報を入れてはいけないということです。

よくある不正会計処理例に、債権者や株主に対して「売り上げが大きいから、会社は順調に運営している」と誘導するために、実際には存在しない取引を期末に大量に計上し、決算書上の売上を大きくする例があります。

また明瞭性の原則には、営業成績評価などの粉飾行為のような「上司・部下」の間柄でも発生する場合も多いようです。外部だけでなく内部不正にも注意をしましょう。

継続性の原則

【企業会計は、その処理の原則および手続を毎期継続して適用し、みだりにこれを変更してはならない】

「複数の会計処理・原則」や「選択適用」が認められているような会計事実がある場合、一度採用した選択した方法は、原則的に継続して採用する必要があります

例えばクレジットカードで決済を行う場合、「決済実行日」と「引き落とし日」のどちらかで処理しても問題ありません。しかし、一度決済実行日での処理を選択したのならば、継続して決済実行日で処理しなくてはいけないということになるのです。

ただし「原則的」にとあるように、正当な理由がある場合は変更が可能になります。営業拡大などのタイミングで請求書の締日が変更になることもあるでしょう。その際は変更が可能ですが、当然変更後は継続採用する必要があります。

保守主義(安全性)の原則

【企業の財政に不利な影響を及ぼす可能性がある場合には、これに備えて適当に健全な会計処理をしなければならない】

簡単に言うと、将来の危険に備えて、慎重な判断に基づく会計処理をし、健全な発展を図りましょうということです。「昨年よりも貸倒率は低いんじゃないかな」というような、理由のない楽観的な思い込みはせず、昨年と同様かそれ以上のリスクがあると、常に考えましょうという原則ということになります。

単一性の原則

【株主総会提出のため、信用目的のため、租税目的のためなど、種々の目的のために異なる形式の財務諸表を作成する必要がある場合、それらの内容は、信頼しうる会計記録に基づいて作成されたものであって、政策の考慮のために事実の真実な表示をゆがめてはならない】

事実・真実を歪めるような内容の財務諸表を作ることは認められず、提出先に応じて盛り込まれる情報の本質を変えてはいけないということです。ちなみに、提出する相手がわかりやすいように、財務表の形を変えることは問題ありません。変更してもいいですが、内容は同じで単一性がなくてはいけないのです。

受け取り側によって「赤字」「黒字」が変わってしまうような内容の決算書は、もちろん問題外になります。

まとめ|一貫性をもった「公正妥当」に徹頭徹尾しましょう

新しい制度や制度の変更に対応した、年度ごとの会計対策は必須になります。その際に必ず必要になって来る基本知識が「企業会計原則」です。少し難しい言葉なのでとっつきにくいかもしれませんが、理解すれば迅速な対応が出来るというメリットが生まれます。この機会にきちんと理解し「公正妥当」な判断が出来るように心がけていきましょう。

今回のポイント
  • 真実性の法則・・・「公正妥当な範囲」であれば相対的なもので十分であり、絶対的な基準はない
  • 正規の簿記の原則・・・複式簿記を採用し、すべての取引の2面性を表現できるように帳簿を管理
  • 資本取引 損益取引区分の原則・・・「本業収支」と、増資・社債の株式転換・投資などの本業以外の収支を、明確に区分して記帳
  • 明瞭性の原則・・・財務諸表は、会社の債権者や株主に対して、間違った情報や誤解を誘導するような情報を入れてはいけない
  • 継続性の原則・・・一度採用した選択した方法は、原則的に継続して採用する必要があり
  • 保守主義(安全性)の原則・・・将来の危険に備えて、慎重な判断に基づく会計処理をし、健全な発展を図る
  • 単一性の原則・・・事実・真実を歪めるような内容の財務諸表を作ることは認められず、提出先に応じて盛り込まれる情報の本質を変えてはいけない

(編集:創業手帳編集部)